AxOSとHyprlandについて

新しいArch Linux系のディストリビューションのAxOSについて現在わかっていることを紹介

Hidekichi

AxOS

AxOSはフランスで作られたArchLinuxをベースとしたLinuxのディストリビューションです。ManjaroEndeavourOSのような方向性とは違い、いくつかの目新しいシステムが組み込まれています。
2025年6月11日のリリースとあるので本当に新しいディストリビューションです。他のArch系ディストリビューションと同様にローリングリリースですが、新しすぎてまだ多くの情報が出揃っていません。またユーザープライバシー重視でデータは開発者側にも第三者にも送信されません。

ARMアーキテクチャ:
これまでにあったx86_64のアーキテクチャとはまた違う構造・思想を持っていて、低電力で低発熱、小型がしやすいとか色々とメリットがありながらも、これまでのソフトがx86_64に最適化されており、バイナリ自体が異なるためそのままでは動作せずエミュレーションなどを利用してソフトを動作させる必要があるため、Windowsのような多種多様なソフトウェアメーカー、デバイス機器を作っているメーカーなどがあると、それらを一度に最適化することは難しくAppleのように自社でハードとソフトを持っているメーカーとは違って思うような成果が発揮できていない状態であると言えると思います。
2024年からCopilot+PCというARM PCの販売を行っているわけですが、思うほど話題になっていないわけです。OSやハードはソフトを動かすためのものであり肝心のソフトの対応が進まないと移行もできないと言うのはあるわけで、せっかくの省エネなアーキテクチャがありながらもまだ恩恵に預かれていないという感じかと。
これらは今後しばらく続くと思いますがWindows ARMでも改善の兆しはある事も着目して今後の動向を見守る感じになるかと思います。

最小要求スペック

PlasmaCallaSleexTheom
CPU64bit(x86_64)64bit(x86_64)64bit(x86_64)64bit(x86_64)
RAM4GB2GB4GB2GB
DiskSpace10GB10GB10GB10GB

推奨スペック

PlasmaCallaSleexTheom
RAM8GB4GB8GB4GB
DiskSpace50GB20GB40GB20GB

Install時のオプション

これらがスイッチボタンになっていることから選ばない場合は最小構成になると想像できます。その場合は後から自身で必要なものをインストールしていくことになります。
これはスタンダードな方法ですが、初心者にとってはどういうソフト名で、何を入れたら良いのかがわからないことがあるため、それらの救済的なオプションかと思います。

もしどのオプションも自身のしたい事の主としたものではないが、困ったらDeveloperキットあたりを選択するのでよいのではないかと思います。CLIツールなどは何がどれかもわからない場合があるので、ひとまず入ったものを調べていく内に色々知れる機会もあるだろうと思うので。

CLIツール:
コマンドラインインターフェイスを使用して操作するツールのことを言います。つまりはターミナルなどを使用するものです。

Install user kitとは?

これらでは、使用する目的に応じて初期構成のプロファイルを選択できます。

  1. Artistキット
    • クリエイティブ作業向け(グラフィック、動画、音楽制作など)
    • 画像編集ツール、デザインソフトなどが優先インストールされる
    • すぐにクリエイティブ作業に入れる
    • 例として、GIMP、Inkscape、Krita等のようなソフトが選ばれるだろうと思われます
  2. Developerキット
    • ソフトウェア開発、プログラミング専用環境
    • エディタ、コンパイラ、ビルドツール、Gitなどが追加される
    • すぐに開発を始められる、あるいは最短で構築可能な状態
    • 例として、VSCode、Neovim、Git、Docker等のようなソフトが選ばれるだろうと思われます
  3. Hackerキット
    • システムや低レベル操作、ハッキング風作業向け
    • ネットワークツール、シェルユーティリティ、システム解析ツール等のようなソフトが選ばれるだろうと思われます
    • トラブルシューティングやリカバリに強い環境
    • 例として、tmux、htop、nmap等やCLIツールなど

インストール時にこれらを選べは最初からそれらに応じたソフトウェアが導入されて始まるという事ですが、結果的に個人個人で必要なものは違うので、それらを後でインストールしなくても良いと言うだけの事で、必要なものはいずれにしてもインストールする必要はあるので便利機能とだけひとまずは思っておればよいのではなかろうかと。

カーネル

インストール時に選べるzenカーネルは、低レイテンシとデスクトップパフォーマンスの向上を目的としてカスタマイズされたArch Linux公式の代替カーネルです。

Zenカーネルは、

には向いていません。逆にそれに以外には向いているとも言えると思います。

パッケージ管理

従来のArch系ディストリビューションではpacmanがデフォルトでしたが、AxOSではEpsilonというRust製のパッケージマネージャとなっており、これはpacmanとAURの両方からのパッケージを検索・インストール可能となっており、よりわかりやすい形でパッケージ管理ができるように新設されたものです。
そのため、他のディストリビューションで使えるように配布もされていませんし、ソースからビルドしたとして使えるのかも今の所はまだ不明です。

# Just install a package or a list of packages
# (複数)パッケージのインストール
epsi install <package1> <package2> ...
epsi i <package1> <package2> ...
epsi -S <package1> <package2> ...
epsi sync <package1> <package2> ...
# Remove a package or a list of packages
# (複数)パッケージのアンインストール
epsi remove <package1> <package2> ...
epsi rm <package1> <package2> ...
epsi -R <package1> <package2> ...
# Upgrades locally installed packages to their latest versions
epsi upgrade
epsi -Syu

# Upgrade with backup
epsi upgrade -s -d
epsi upgrade --with-snapshot --delete-snapshot-onfail

epsi -Syu -s -x
epsi -Syu --with-snapshot --replace-snapshot
# Removes all orphaned packages and clears the package cache
# 孤立したパッケージの削除、パッケージキャッシュの削除
epsi clean
epsi -C

このようなコマンドで使用する形になっています。-Syuのようにそれぞれの意味を知っていれば3文字で良いので簡潔ですが、意味がわからない場合を想像するとupgradeと書く方が意味はわかりやすいと思います。

デフォルトデスクトップ環境 Sleex

AxOsの公式スクリーンショット

Sleex(スリークス)は、Hyprlandをベースに構築された、洗練されたビジュアルと豊富な機能を備える主要デスクトップ環境です。滑らかなアニメーション、多彩なウィジェット、ワークスペース管理など多機能ながら軽快な操作感が特徴と言われていますが、現在はまだ他のデスクトップ環境と比べて安定性は劣ると言われています。
また他のディストリビューションには対応していません。専用独自デスクトップ環境と言えそうです。

タイル型のウィンドウ管理となっており、キーボード中心の操作に最適化されています。キー操作によるウィンドウの移動・配置をスムースに実行可能。スタック(スタッキング)型に比べて非常に軽いと言う評判です。
これらの設定は、super + F1で設定画面が表示され、各種キーバインドの設定が可能です。

ウィジェットとUI各種

トップバー

トップバーには、タイトル表示、リソースモニタ、ワークスペースナビ、日付表示などがあります。

ダッシュボード

トップバーの日付か、super + ↓で表示される。各タブには以下のような機能があります。

その他のウィジェット

それ以外のデスクトップ環境

これらは、AxOS用に、Awesomeやi3をラップした構成となっていて、技術的には他の環境にも移植可能な形で提供されているそうです。

Hyprlandとは?

HyprlandはWayland上で動作する次世代のタイル型ウィンドウマネージャです。これ自体はC++言語で書かれていて、Debian系ではやや注意が必要ですが、他のディストリビューションでは概ね問題なく対応しています。
どういうものであるかは上記リンクで公式サイトに行くと動画で紹介されています。また、各種ドキュメントも揃っていますが英語です。

Arch Wikiでの説明はHyprlandになっています。公式のドキュメントでおおよそ間に合うと思いますが、ディストリビューション独自の問題点や視点もあるでしょうから、導入する際は各種ディストリビューションのドキュメントも参照すると良いと思います。

主な特徴

特徴内容
ダイナミックタイル管理i3wmなどと同様、ウィンドウを自動で整列・管理。マウスでも柔軟に操作可能
高速描画Waylandネイティブで、アニメーションや透明効果が非常に滑らか
カスタマイズ性hyprland.conf と Hyprlang で柔軟に設定可能
エフェクト統合透過・ぼかし・アニメーション・角丸などが最初から組み込まれている
プラグイン不要i3やbspwmで必要だったような拡張が、最初から内蔵されている
スクリプト対応外部ツール(Waybar、rofi、swayncなど)との連携も可能
マルチモニタ対応ワークスペースとモニタを柔軟に割り当て可能。Waylandのマルチモニタ制御に強い
[Wayland]
   ↑
[Hyprland Compositor]
   ├── Hyprlang (設定ファイル)
   ├── Layout Engine (タイル/フロート)
   ├── Input Handling (マウス/キーボード)
   ├── Effects Manager (透過/アニメ)
   └── IPC (外部連携)

Waylandを直接制御するコンポジタであり、X11のウィンドウマネージャとは異なり、描画や入力を自前で処理します。

他のタイル型ウィンドウマネージャに比べるとやや学習コストは高いものの、良い部分(アニメーションやデザイン、開発の活発度)などが多いと思われます。

注意点

  1. XWaylandアプリの描画問題:一部のX11アプリでは不具合が出ることも(例:古いGIMPやElectron系アプリ)
  2. NVIDIA環境で不安定:Wayland対応が限定的。ハイブリッドGPUやOptimus環境では試行錯誤が必要
  3. ウィンドウルール設定がやや複雑:自動でフロートにしたいなど細かい制御には慣れが必要
  4. スクリーンショット・通知などは外部ツール必須:例:grim, slurp, swaync, waybar など

まとめ

HyprlandはWayland時代の最前線を行くタイル型ウィンドウマネージャであり、軽量さ・美しさ・操作性を高いレベルで両立していると言われています。伝統的なi3やX11ベースウィンドウマネージャとは一線を画す進化系で、 「デスクトップ美学と機能美を両立したい」 というユーザーに最適です。ただし、NVIDIA・VM環境では調整が必要で、安定性を求める場合は他の選択肢も検討する必要があります。

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