この記事は2025/8/15に書き始めましたが、DistroWatchでは、2025/8/20にようやく掲載され始めました。
もしかするともっと前から記載はあったのかもしれませんが、検索してもでてこなかったのでおそらくは8/20が掲載日かと思います。
ArchRiot(アーチライオット)とは、Arch Linuxをベースにした、Hyprlandをプリインストールで即使える状態にしたディストリビューションです。これはYouTubeなどでも最近注目を集めている新しいArch系の選択肢の一つです。
紫を基調としたCypherRiotテーマによる美学的なデザインと、ユーザー体験の向上を目指したカスタマイズが特徴です。2023年頃から開発が進められ、比較的新しいディストリビューションと言えます。
なぜ今注目されているのか?
Hyprland は Wayland世代のタイルWM(ウィンドウマネージャー)として注目度が高まりつつある中で、ArchRiotはそのHyprland環境を設定不要で使いたい人に向けて具体化したディストロであり、YouTubeなどで「導入が簡単」というコンテンツネタになったことで話題化しているようです。
X11からWaylandへの移行が進む中、Waylandネイティブのディストリビューションが注目されています。
以下にその特徴を整理します。
ArchRiotの概要
ArchRiotは、Hyprland(Waylandをベースにしたタイルウィンドウマネージャ) を最初からセットアップ済みで提供しているディストリビューションです。
“Hyprland Has Never Been Easier” ((Hyprlandはかつてないほど簡単になりました))の言葉通り、設定済Hyprland環境を手軽に手に入れられるようにした設計になっています。
ArchRiotは、「パッケージを選んでセットアップする手間」を省きたい人向けに設計されたディストロと言えます。Hyprland環境の導入を「カスタムから選ぶ」のではなく、「最初からできている」とするアプローチです。
項目 | 内容 |
---|---|
ベースディストロ | Arch Linux(ローリングリリース) |
ウィンドウマネージャ | Hyprland をプリインストール(カスタム設定済) |
利用対象 | Hyprlandを試したい人/Wayland環境にすぐ入門したい人 |
用途 | 手軽にモダンでカスタマイズ性の高い環境を体験したい時に最適 |
GnomeやPlasmaのように統合されたデスクトップ環境はそれぞれの機能がデスクトップに内包されているので通知にしろ時計にしろがそれぞれ単体で動きながらもそれらをまとめてGnomeであったりPlasmaとなっていますが、Hyprlandはウィンドウマネージャー(とコンポジター)であるため、GnomeやPlasmaの機能で言えばその一部でしかありません。
Hyprlandを導入してそれらと同等の機能をもたせるなら、それぞれ必要とするコンポーネントを別途導入する必要があります。
ArchRiotはそれらも最初から最適化されたものが導入されるため、すぐに使用できるようになっています。
これまでWaylandに対応する タイリング型のウィンドウマネージャーは Swayしかなく(Wayfireとかあるにはありますが)、これはi3をフォークしてWayland向けに1から作られたものですのでi3
と操作性はほぼ同等でした。
もちろんタイリング型のウィンドウマネージャーは他にもありますが、Waylandに対応するものとしては、Hyprlandは新しいタイリング型のウィンドウマネージャーとなります。と言ってもHyprland自体も前からあるのはそうなのですが。
Windowsなどのようにスタック型のウィンドウマネージャー((ウィンドウが重なって表示されるタイプ))を持つOSを使用していた人からするとタイリング型の操作は別途学習しなければならない事項になりますが、慣れるとウィンドウ操作が圧倒的に速くなります。
PCを起動して毎回同じようなウィンドウを開く作業をしている事はないでしょうか?
エクスプローラーを開いてブラウザを開いて、他にも色々とウィンドウを開くというような作業です。
もちろん予めどこにどのウィンドウを開くかを設定しておいて、それらを1発で開くなどもできるわけですが、時々レイアウトを変更したり、したかったりもあるはずです。ブラウザを小さくしてエクスプローラーを大きくしたりとか。
動画プレイヤーや音楽プレイヤーをブラウザの横に置いておきたいとかもあるでしょう。
そういった場合にタイリング型はディスプレイにウィンドウを敷き詰めるように展開していきます。その位置や大きさをSuperキー(Winodwsキー)から組み合わさるキーボードショートカット(キーバインディング)で操作していくという感じです。
マウスを使用するのはアプリケーションを操作する時だけとなりますが、マウスでもウィンドウの操作はできます。
仮想デスクトップ(ワークスペース)も何面かあり、それらの切り替えで最大表示しているアプリと通常のレイアウトで敷き詰められたウィンドウ群を切り替えて操作ができます。これらは各操作に当たるショートカットで切り替えられるためマウスで操作する煩わしさが軽減できますし、アプリを快適に使用することができます。
概要
- Hyprland Tiling WM: デスクトップ環境の核となるタイル型ウィンドウマネージャー。
- Go Binary Installer: アトミック操作((コピー開始 → ファイルAはコピー完了 → ファイルBで失敗 → でもAは残ってる…という状態になる事が一般的な操作の流れの中ではありえますが、アトミック操作とは何かしらが失敗した → 更新しない、全て成功した → 更新 というような、やるかやらないか、All or nothing それがアトミック操作です。))、即時ロールバック((インストール時に何かしら失敗したとしてもすぐに最初からやり直せる仕組みです。古い状態をインストール前に保存しておいて、何か失敗した場合は保存してあるものをもとに戻すという事で状態を維持します。))、依存関係の問題がないインストーラー((通常のArchLinux操作ではPacmanで依存関係を解決して、必要なライブラリなどを導入しつつパッケージの更新などを行いますが、Go Binary Installerでは依存関係を含めた実行ファイルなので、それだけで確実にインストールできる事を保証しています。))。
- プライバシー重視: テレメトリー((ソフトウェアやデバイスがユーザーの使用状況を自動的に収集することを意味しています。Windows 10 の「診断データ送信」、Firefox の「パフォーマンスデータ送信」というようなことです。これらを行わないと表明しています。))やトラッキング、企業によるデータ収集を行わない。
- CypherRiotテーマ: 丁寧に作り込まれた、暗いテーマのデザイン。
- 開発者向け: 開発に必要なZed、Neovim、コンテナなどのツールが最初から含まれている。
- メモリ管理: ラグを防止し、応答性を向上させるインテリジェントなメモリ管理システム。
- コントロールパネル: ポモドーロタイマー、ブルーライトフィルター、ディスプレイ設定などを管理できるGTK4ベースのコントロールパネル。
- バックアップとリカバリ: システム全体のバックアップとリカバリができる「Migrate((Linux関係だとTimeshiftやBtrfs/ZFSスナップショットに近い考え方で、OSが起動している状態であればその時点でのスナップショットをとり、問題が起こった後OSが起動さえしていればそれまでにとったスナップショットからロールバックできると言うようなものですが、おそらくは何かしらのソフトを導入したが問題が起こって正しくソフトが使用できないなどの場合に元に戻すような機能だろうと思います。))」ツールを統合。
- GPUサポート: NVIDIAやAMD/Radeonを含む主要なGPUの最適なドライバーを自動的に検出・インストール。
- Waybar: ポモドーロタイマー、VPNステータス、システム監視などのモジュールが組み込まれたステータスバー。
大まかな概要・特徴は上記の通りです。
riotインストーラーについて
本来Arch Linuxはインストーラーが付属せず自身で色々と必要なものを導入していくシンプルを絵に書いたようなディストリビューションであり、それが故にインストール自体が難しいわけですが、それらを簡単にできるようにしたManjaroやEndeavourOSなどが人気を集めています。
現在ではarchinstallという対話式のCUIインストーラーが標準でISOに入っていますがCUIであり全く何も知らない人からするとインストールは依然として難しいままです。
そもそも選択肢に書いてある事の意味がわからないとか、パッケージがどういうものかもわからないとかがありえます。
ManjaroやEndeavourOSなどでは、それらのインストールプロセスをGUIでできるようにしてあり、Arch Linuxを使用する敷居をだいぶ下げてくれているというわけです。
現在のLinuxインストーラーはGUIを用いてマウスの操作だけで完了できるインストーラーであるのに対して、ArchRiotのインストーラーはGUIフロントエンドを備えているものの、実態はテキストベース操作に近いシンプルな設計で、UbuntuやFedoraのような本格的なGUIインストーラーとは異なる、幾分かだけGUIインストーラーで以前からあった半GUI(TUI(TextUI)的)なインストーラーです。
GO言語で書かれた「riot」インストーラーは、他のGUIインストーラー同様に、
- Wi-Fi検出
- ディスクのパーティショニング
- LUKS暗号化
- ミラーサーバーの自動選択
などは選択できるので初心者でも簡単にセットアップは可能です。インストールはほぼ全自動で、Arch Linuxの複雑な手動インストールのハードルを下げています。ただGUIインストーラーよりは入力・選択などがありそのあたりがやや失敗を招く恐れがあると言うだけで基本的には簡単です。
アップデートの方法など
通常、sudo pacman -Syu
でArch部分、あるいはHyprland部分のアップデートは行われますが作者が最適化したスクリプトやテーマ、キーバインディング、細かな最適化などは作者のGithub等で管理されていてpacmanとは別ですから、
curl -fsSL https://ArchRiot.org/setup.sh | bash
と言うスクリプトでそれらを別途アップデートします。
実行画面は上記のような感じです。
例えば、ホームディレクトリ以下の.bashrc
や .zshrc
に以下のように書けば、ターミナルで riot-update
と入力するだけで、スクリプトが実行されるようになります。
alias riot-update='curl -fsSL https://archriot.org/scripts/upgrade.sh | bash'
まとめると
sudo pacman -Syu # システムの更新
yay -Syu # AURの更新
↑これらと、
curl -fsSL https://ArchRiot.org/setup.sh | bash
↑これをすることで全てがアップデートされます。
コアシステムでシェルがFish
になっているので、一度入力して実行すればその後は、一部を入力すれば残りを補完してくれるとは思いますが、前述したようにエイリアススクリプトを書いておけばエイリアスで実行できるので、それらはやりやすい方でやればよいかと思います。
WaylandとHyprlandの最適化
Waylandプロトコルに特化し、特にHyprlandをデフォルトのデスクトップ環境として採用。軽量かつモダンなUIを提供し、視覚的な美しさ(紫を基調としたテーマ)とパフォーマンスを両立しています。
XfceのデフォルトファイルマネージャーであるThunar(トゥーナー)がArchriotでもデフォルトファイルマネージャーですが、ここにもパッチ適用し、アイコンのちらつき問題を解消するなど、細かな最適化が施されています。
Xfceの公式サイトこのトップページにThunarのスクリーンショットが出ていますので気になる方はチェックしてみて下さい。
またWikipediaでThunar(ソナー)と記載がありますがこれは間違いです。
北欧神話の雷神Thor(トール) に由来するこのファイルマネージャーは、開発者であるBenny Siegertがドイツ人で、ドイツ語読みではトールを「トゥーア」と読むことがあるため、そこから来ているのであればThunarはトゥーナーであるはずだというAIの見解です。
Youtubeなどでも英語の動画ではトゥーナーと発音してる気がします。こちらの発音が聞けるサイトでもトゥーナーなのでWikipediaが間違えていると思われます。
セキュリティとパフォーマンス
Secure Boot対応を強化。sbctlを基盤にしつつ、EFI変数への直接アクセスを採用することでセキュリティを向上。
Linuxカーネルのメモリ管理を最適化(ページングやキャッシュ処理の改善)し、軽快な動作を実現。
Arch Linuxのローリングリリースモデルを継承し、常に最新のパッケージを利用可能。
Secure BootはUEFIの機能で、起動時にOSのブートローダーやカーネルに 信頼できる署名 があるかを検証する仕組みです。sbctl((Arch Linux由来のSecure Boot管理ツールです。ユーザーが自分の鍵(署名鍵)を作成し、カーネルやブートローダーに署名できます。Microsoft署名に依存せず、自前の鍵で Secure Boot を運用可能にしています))をベースにしつつEFI変数を直接扱うことで、より厳密かつユーザー管理型のSecure Bootを実現しています。
Linuxカーネルのメモリ管理を最適化しており、メモリの使い方をより効率的にして、システム全体を軽快に動かすよう調整してあります。
コミュニティとデザインの独自性
開発者(@CyphrRiotなど)は、ArchRiotを「美学と機能性の融合」と位置づけ、他のディストリビューションとは異なる独自の体験の提供を目指しているようです。
Xの投稿では、ArchRiotのインストールの簡単さやパフォーマンスがユーザーから高く評価されており、Linuxコミュニティで話題になりつつあります。
コアシステムの変更
※ ここは原文を訳す形で掲載して、感想を書きます。
(オリジナル → 変更後) | |
---|---|
ターミナル | kitty → Ghostty |
ブラウザー | Chromium → Brave |
ファイルマネージャー | Nautilus → Thunar |
Shell | Bash → Fish |
テーマ | CypherRiot |
コードエディター | Zed |
アプリケーション | すべての主要アプリがネイティブWaylandで動作するようになりました |
Migrate バックアップツール | CyphrRiot内蔵システムバックアップ/復元ソリューション(組み込み) |
メモリ最適化 | 実際に機能するインテリジェントなメモリ管理 |
ブルーライトフィルター | 目の疲れを軽減する3500Kのhyprsunset(設定可能) |
GTKテーマ | ダークテーマであればどれでも |
DPI Scaling | すべてのアプリケーションで一貫したUIを実現するためのスケーリングの問題を修正しました |
Memory Management Fix
※ ここは原文を訳す形で掲載して、感想を書きます。
Linuxのデフォルトのメモリ管理は、キャッシュに関してかなり愚直(賢くない)です。
カーネルはファイルキャッシュのために平気でRAMの90%以上を消費し、その後アプリケーションが実際にメモリを必要としたときに解放に苦労するのです。
ArchRiotの解決策として、賢いメモリ管理のチューニングにより、以下を実現します:
- アプリケーションを開く際のラグ(引っかかり)スパイクがなくなる
- メモリ不足時でもより良い応答性
- 適切なRAM活用によるスワップ使用量の削減
- システムリソースを食い潰さない最適化されたキャッシング
結果として、複数のアプリケーションを同時に実行しても、システムは高速かつ応答性を維持します。
これらメモリチューニングについて、他のディストリビューションではどうかと言うと、基本的にはLinuxカーネルのデフォルトの挙動を尊重する 方向で、あまりチューニングは行っていないと思います。
Ubuntu、Fedora、openSUSEもそのままデフォルトを使用していて、サーバー用途などによりデフォルト値を微調整する事はあります。Arch Linuxもやはりデフォルトを尊重しているわけですが、これは前者とは違いユーザーが勝手に調整する前提であるからです。
ArchRiotが「Linuxのデフォルトのメモリ管理は、キャッシュに関してかなり愚直(賢くない)」と言うのは他のディストリビューションがあまりメモリをチューニングしないことに対するロックンロールではないかと。
他のディストリビューションではZenカーネル
を採用したりすることもあります。結果的にいずれの方法を取るにせよ、ラグのないスムースな操作性を目指しているということです。
他のディストリビューションとの比較
Arch Linuxとの違い
Arch Linuxは高度なカスタマイズが可能ですが、インストールや設定が難しい。ArchRiotはこれを簡素化し、Hyprlandやテーマをデフォルトで提供しています。
Arch Linuxは今でこそインストーラーがついてはいますが、そもそもがシンプルであることが良いという考えで、自分で必要なものを導入してシンプルかつミニマムで、ローリングリリースによりなるべく最新の状態を提供するというスタイルなので、環境が整ってしまえばとても便利に使えるものの、その取っ掛かりの敷居が高いことで有名です。
それらをできるだけシンプルにインストール後に、ある程度は自分にとって必要なものを導入する必要はあるものの、ほぼでき上がった状態で提供するスタイルで提供されるArch系ディストリビューションが増えつつあります。
これはできあがったものを長く維持できるようにするUbuntu LTS
などとは真逆の発想でもあります。
Manjaroとの違い
ManjaroもArchベースで初心者向けですが、ArchRiotはWayland/Hyprlandに特化し、より軽量で独自の美学を持っています。
Arch系ディストリビューションのデビューとしてManjaroはとても良い選択ですが、そろっている状態でソフトを使うだけならUbuntuでも他のディストロでも同じですから、Arch系を選ぶ人たちにとってはちょっと退屈かもしれません。
しかし、ManjaroでArch系を勉強することは大事だと私は思います。
Garuda Linuxとの類似点
ビジュアルとパフォーマンスの最適化に注力する点で似ていますが、ArchRiotはインストールの自動化やSecure Boot対応で差別化。
GarudaはArch系の中でもやや異端なディストリビューションで、独自にChaotic AURというリポジトリを持っています。これはビルド済みのパッケージを提供しており、ビルドする時間を軽減できるのは大変ありがたいです。他のArch系ディストリビューションでも導入すれば使用はできます。
またフォーラムも活発で新しい技術をいち早く取り入れてArch系の幅の広さを体現するような存在です。ただしこういったディストリビューションは比較的重くなることが多く、Garudaも他のディストリビューションよりもやや高いスペックを要求します。
ちなみにGaruda LinuxもHyprlandエディションがあります。ただしまだMight be unstable とあり、不安定になることがあるというのと、For advanced users only とあるので、鋭意開発中という感じでしょうか。自分でトラブルシューティングできるスキルが必要ともあります。
Garuda Linuxにはこのように様々なエディションがあります。
なぜ話題になっているのか?
インストールの簡単さ-ちょっと詳細に
注意事項
インストールする際にUSBメモリから起動させるため、BIOS(UEFI)でブートプライオリティを最優先させると思いますが、その際についでに、PCの内蔵時計が狂ってないかも確認 して下さい。
内蔵時計が狂っていると、正しいサーバーが選択できないかもしれません。
Reflectorは最新のミラーリストを取得して、フィルタリングおよび速度でソートしサーバーのミラーリストを書き換えるPythonスクリプトでインストール前にそれが動作します。
正しいサーバーが選択できない場合、Worldwideのサーバーを探すようにフォールバックすると思いますが、300箇所ぐらいサーバーがあるので各5秒かかるとするとインストール作業だけでなんだかんだで1時間ぐらいかかる可能性があります。
これはこの事だけではなく、他の要因があるのかもしれませんが、公式ドキュメントでもあるように本来は15分程度でインストールできる はずであり、4倍のISOの容量があるEndeavourOSでも15分程度でインストールが完了しますから1時間はおかしい挙動なのです。
原因になる部分を潰すためにもPCの内蔵時計が正しいことを確認するようにして下さい。
Arch Linuxの敷居の高さを解消しつつ、最新の技術(Wayland、Hyprland)をすぐに使える点が魅力的。
コミュニティの盛り上がり: X(@CyphrRiotなど)での活発な発信や、ユーザーからのフィードバックが話題性を高めています。
ニッチなニーズへの対応: 美学的なデザインやWaylandの完全サポートは、モダンなLinuxユーザーのニーズにマッチしていると思います。
前にも触れましたが、すでに出来上たものをできるだけ長く維持するという考えならそれはUbuntuで良いのです。しかしそれは本当に退屈で、Windowsで毎日同じソフトを使って同じことをしているような退屈さです。
この記事の中でも触れましたが、Thunarはファイルマネージャーでありながらプラグインもあり、また独自のアクションを設定できたりもします。Windowsであれば、別途それ用のソフトを導入する必要があるぐらいの機能です。
例えば一括リネームやファイルコンバート、アーカイブの圧縮展開(解凍)などです。
これら機能がありながら軽量高速なのです。
ArchRiotは完成された形で提供されていますが、基本はArch Linuxであるため、それらはArch Wikiで色んなカスタマイズ・設定方法・トラブルシューティングがすぐに対応できます。もちろんあれだけ事細かに書いてあるArch Wikiでも足りないようなトラブルに見舞われる可能性もあります。
そういった場合には、Manjaro、Garuda、EndeavourOSあたりのユーザーフォーラムを参考にすると多くは解決できたりもします。ほぼ英語なので大変ですが、現代ではAIがあるので言語の問題はある程度解決でき、更に書いてあることが難しすぎたとしてもそれらを解説してくれるわけですから昔に比べて圧倒的にわかりやすくはなっています。
ただAIはとてもそれらしく間違える のが困りものであるのです。わからないならわからないとしてくれるとまだ良いものの一見正しそうに見える間違いは、それを見て適応するユーザーのスキルと判断に左右されます。
このあたりのトラブルもArch系初心者だと手に負えない可能性があるので、それらを鑑みてArchRiotは初心者向けではないと言えると思います。
Hyprlandを採用したArch系のディストリビューション
まだ多くはないものもHyprlandが採用されたディストリビューションはいくつかあります。
- Garuda Linux
- CachyOS
- AxOS
- ElysiaOS BGMが鳴ります。注意
- ElysiaOSは既存ディストリを自分色にカスタムして、そのスクショや設定を共有する文化(Rice)であり、再配布ディストリビューションとは必ずしもイコールではありません。
- ただし、人気のRiceが発展して「設定済みISO」として公開される場合はあり、それが小規模な独自ディストリのように見えることもあります。例えば各ディストロのコミュニティーエディションはRiceなどから公式に発展したりとかもあるわけで。
- これらから、ElysiaOSはRiceでもあり、Rice Distroにも限りなく近いが、今はまだRiceであると言う感じかと。今後色々と充実発展するとRice Distroになりえると思います。DistroWatchではディストリビューション扱いではあります。
Riceは、既存ディストリビューション(例:Arch Linux)をベースにして、ユーザーが自身の設定(dotfilesやテーマなど)をカスタムして楽しむ文化。例として Hyprland + Waybar + 自作テーマなどがあり、Rice Distroは、その “Rice” 設定を配布可能な形式に整えたもので、インストール後すぐにRiceされた環境が再現できるディストリビューションです。
ISOを配布したり、インストールスクリプトを提供して独自のArch環境に変えるものです。
よってArchRiotはRice Distroに該当します。車でいうと、自分の車をカスタムするのがRiceであり、ミツオカのようにベースの車を仕入れてカスタマイズし独自の車としてリリースするようなスタイルがRice Distroと言うことです。
Rice Distroのような感じにベースとなるディストリビューションをまず入れて、ユーザースクリプトでHyprlandを適用しているものは他にもいくつかあります。EndeavourOSにもありました。
まとめ
ArchRiotは初心者向けかと言うとそうではなく、Windowsから移行してそれまでのように使用できるかと聞かれたら返答に困る位置づけのディストリビューションです。
元々ある程度の知識のあるWindowsユーザーであれば移行自体はできると思います。しかしそれだけでは足りない部分も多く、おそらくはわけがわからなくなってまたWindowsに戻るか、別のディストリビューションを選ぶことになると思います。
ウィンドウの形態も異なり、それら操作も学習する必要があります。Windowsキー(LinuxではSuperキー)をWindows使用時でもほぼ使わないのに多用する事にもなります。
Windowsアップデートと各ソフトのアップデート機能任せで、ターミナルを操作してChocolateyも触ったことがない人にとって、pacmanすら扱えないかもしれません。GUIなソフトインストーラーは存在はするものの名称もわからなければ探すこともできないでしょう。
Windowsはまだしも、Linuxはどこにどんなファイルが入り、そのファイルには権限がありと、10年ぐらい前に(もっと前かもしれませんが)WebサイトをFTPを使用して管理していた人ならまだわかるかもしれません。しかし、今やブラウザ上で記事を書きそのまま投稿すればブログになるというお手軽さで、仕組みもわからないでしょうから、こういった点で初心者向けではないとも言えると思います。
しかしこれらを少しずつでも理解して、またそういうPCいじりの好きな人にとってはArch系だけとは言わずlinuxはとても面白い道具になると思います。そしてそれらが完成すれば、自身にとって一番使い勝手の良いOSになるわけですから、普段遣い最強の環境を得られます。
Windowsにある有名どころのソフトはLinuxにもだいたいあります。VS Codeや、GIMP、その他諸々。一方、ArchRiotのコードエディターとしてZedが入っていますが、これはWindowsでもリリース予定はあるものの現在((2025/8/22))ではMacとLinux向けにしかリリースされていません。
最近ではSteamを始めlinuxでもゲームができる環境が整いつつあります。そのためにはグラボなどそれ用の装備も必要になるわけですが、それでもWindowsよりもまた他のディストリビューションよりも、圧倒的なメモリの少なさ、爽快なレスポンスを誇るArchRiotですから、ソフトの対応さえあればWindows以上の快適さを得られると思います。
Arch系のピーキーの代表と言って過言ではないCachyOSは、Windowsで140fpsしかでないのに、165fps出るとか何とかで話題になっています。あくまでそれ用に設定すればというのとピーキーであるというのはより最新機器に対応すればとも言えて、古いPCに入れても同じようにできるというわけではありません。普段遣いに使えるには使えても、場合によってはクラッシュする可能性さえあります。なのでピーキーなのです。
Linuxを使う人はこれまでそんな所には全く見向きもしなかったでしょうが、徐々に「ソフトによっては」とか「環境が作れれば」と言う前提でLinuxを選ぶ人も「いるには、いる」と言えるようになってきたようです。
結果的にソフトの対応が最重要にはありますが、同じソフトが動作するのならArchRiotは十分使用に耐えられるディストリビューションであると思います。ベースがArch LinuxなのでArch Linuxの評価とArchRiotの独自改良は、互いの評価をプラスされるだろうと。
最終的には使い方次第ではあるんですが。