fcitx5の公式から見る2026年の設定事情

X11からWaylandへの過渡期ということもあり、設定が色々ややこしくなってきているようです

Hidekichi

この記事の内容について
なるべく古いアプリなども考慮に入れた設定も提示したいですが(書くのも検証するのも)、面倒なのもあり、きっと古いアプリにあわせた設定を書かずとも、他で新しく同等以上の機能を持ったアプリが出てるだろうと思うので((なかったらAIにでも聞いて下さい))、それを使用したらいいやんと、2026年2月現在のfcitx5公式wikiの内容に沿って記事を書いた次第です

Fcitx5

fcitx5は、Linuxで日本語を入力するためのもの、つまりはインプットメソッドフレームワークです。フレームワークなので、エンジンであるfcitx5-mozcをインストールすることで、Google日本語入力のオープンソース版を利用可能になります。
従来のfcitx4から設計が刷新され、Wayland環境に標準対応しています。

GTKとQT

fcitx5-imグループをインストールすることで、fcitx5fcitx5-gtkfcitx5-qtfcitx5-configtoolなどがインストールできます。基本的には全てインストールしておけば良いと思います。
gtk/qt環境に特化したいとか、最小構成にしたい時にはそれぞれ個別に必要なものをインストールすればよいかと思います。

インストールできるエンジンは、Mozc以外にも種類があり、fcitx5-skk、fcitx5-kkc、fcitx5-anthyなどがありますが、WindowsやMacと同じような感覚で入力するのであれば基本的にはMozc一択です。skkなどでは、独特な入力方式であり習得に時間がかかります。

GTKとは
GIMP toolkitの略で元々はGIMPを作るために開発されたライブラリです。C言語で書かれており、Gnomeデスクトップの土台となっています。ライセンスが完全に自由なためオープンソースの世界で広く普及しました。
代表的なアプリとしては、Firefox, LibreOffice, GIMP

QTとは
読み方は「キュート」と読みますが、「キューティー」という人とも多いと思います。C++で書かれており、KDE Plasmaデスクトップの土台となっています。非常に強力でLinuxだけではなくWindows、Mac、Android、iOS、更にはカーナビなどの組み込み機器まで、同じコードで動かせるマルチプラットフォーム性能が極めて高いのが特徴です。
代表的なアプリとしては、VLC, OBS Studio, VirtualBox

GTKとQTの話になったのは、これらは見た目(ボタン、メニュー、ウィンドウなど)を作るためのGUIライブラリではありますが、fcitx5-gtkしか導入していない場合に、VLCで動画を見ようとした時に日本語入力ができなくなることがあるからです。

GUIライブラリ
GUIライブラリあるいはツールキットなどと呼ばれ、ボタン、スライダー、チェックボックス、テキストボックスなどの「部品(ウィジェット)」を提供し、それらを配置して画面を作るためのプログラム集です。
フレームワークとしての側面もあり、単に「見た目の部品」だけでなく、イベント処理(ボタンが押された時の動作)や、今回のような「文字入力の受け渡し(インプットメソッドとの通信)」などの複雑な仕組みも一括して管理しています

Waylandはgtkやqtなどの特定のツールキットに依存しなくても共通のプロトコルで入力をやり取りするという理想があります。しかしWaylandがまだ発展途上でもあり、文字は入力できても表示されない((Windowsでもたまにフォーカスがおかしくなって別の小さなウィンドウが出る事ありますが同様のことが起こったり))といった挙動の乱れが起こることがあるわけです。
モジュール(fcitx5-gtk/qt)を使用すると、各ツールキットがfcitx5と直接通信するため変換中の文字がアプリ内にきれいに収まるようになります。そのため、現在ではまだモジュール(fcitx5-gtk/qt)を使用する必要があるのです。なので最小構成ではなく全部入りで導入する事が、どんなアプリを使うかを気にせずに使えるという理由になります。

理想は「モジュールなし」 ですが、現実の快適さを取るなら 「モジュールを入れておく」 のが現時点での ベストプラクティス です。

Arch Linux系でpacmanを使用できる場合では、ターミナルから、

sudo pacman -S fcitx5-im fcitx5-mozc

でインストールできるようになります。上記のGTKとQTを理解していれば、インストール時に何を選択したら良いかがわかるようになるのではないでしょうか?
仮にPamacや他のディストリビューションでGUIなパッケージ操作ができたとしても、インストール時には選択肢が表示されると思います。それらで迷わないように。

IBusなどが使用できる場合、それを使用しても日本語入力は可能ですが、どのディストリビューションでも一貫して同じやり方で設定などができるfcitx5を使用するのが良いのではないかと思います。
以下の記事の中にも書いていますが、IBusと強く統合されているデスクトップ環境の場合に、fcitx5を使用するということは工夫が必要な場合もあります。しかしながらX11からWaylandに移行しつつある現在では、なるべくならWaylandに対応した環境で設定を覚えるのが良いのではないかとこの記事を書いています。

ibus-typerというものが開発中で、IBusをよりモダンなRust言語で書き直そうとする動きや、新しい入力プロトコルへの模索がありますが、fcitx5のシェアを脅かすほどの完成度に至った後継プロジェクトはまだありません。それぐらいfcitx5は2026年2月現在、頭一つ抜けているのです。

Fcitx5公式ではどう書いてあるのか

公式wiki: https://fcitx-im.org/wiki/Using_Fcitx_5_on_Wayland

2026年の主流では環境変数を最小限にし、Waylandプロトコルに任せるという方向に進化しています。

これまでは、

# skip-copy
# システム全体に適用する場合: /etc/environmentに、
# あるいはユーザーディレクトリの場合: ~/.xprofile等に

XMODIFIERS=@im=fcitx
GTK_IM_MODULE=fcitx
QT_IM_MODULE=fcitx

このような記述が必要でした。以前のように「とりあえず/etc/environmentに3行書く」というやり方は、Wayland環境ではむしろ推奨されないケースが増えています

text-input プロトコルの活用

Wayland環境では、アプリとIMEの通信に text-input-v3 などのプロトコルが使われます。これにより、環境変数を設定しなくても日本語が打てるアプリが増えています

ここから、環境変数を設定せず、アプリが直接Wayland経由で使用できると言うのが理想ですが、まだ完全にwaylandに移行しているわけではないので、不完全なアプリ(古いGTK2や特定のElectronアプリ)のために、補助的な設定が必要になっています。

変数名推奨値理由・注意点
XMODIFIERS@im=fcitx必須。 XWaylandアプリ(X11用のアプリをWaylandで動かす際)に必要。
GTK_IM_MODULE(設定しない)最新の推奨。 設定するとWaylandネイティブなGtkアプリで位置ずれや点滅の原因になる。
ただし、Gtk2などの古いアプリで打てない場合は個別設定する。
QT_IM_MODULE(設定しない)最新の推奨。 Qt5/6は自動的にWaylandプロトコル(text-input)を優先するため。

上記のように「環境変数を書かない」のが基本になりつつあります。 設定しなくても動くなら、それが最も安定します
Qt6.7以降では、フォールバックを記述して、

QT_IM_MODULES="wayland;fcitx"

このような記述をするのが増えています。Qt6.7以降で導入された環境変数で、Waylandネイティブ入力を優先して、フォールバックとしてfcitx5(やIBus)を指定するもので、公式では上記例のように書かれています。これはセミコロン(;)区切りのリストを正しく扱うためです。

Ibusもフォールバックする場合は、

QT_IM_MODULES="wayland;fcitx;ibus"

という事です。

主に非KDEではこのように書いて、KDEでは書かないのがベストとされています。
またfcitx5ではなくfcitxである所も注意です。

ここで、クォート(")で囲むか囲まないかの違いがでてきます。例えば、Hyprlandで環境変数を書く場合は、

env = QT_IM_MODULES,wayland;fcitx

このように書きます。この場合は、クォート(")では囲みません

一方、(~/.bashrc, ~/.profileなど)では、

export QT_IM_MODULES="wayland;fcitx"

このようにクォート(")が必須になります。bash/zshではセミコロンがコマンド区切りとして解釈されるため、クォートなしだとエラーになります。

システム全体の/etc/environmentでは、

QT_IM_MODULES=wayland;fcitx

のようにクォートを書きません。systemd/pam_envの仕様でクォートは不要です(むしろ剥がされる)。

これらのように設定場所に応じて使い分ける必要がある ということです。こういった所がややこしいわけです。

デスクトップ環境ごとの事情

GNOME(Wayland)

GnomeはIBusとの統合が非常に強力なため、fcitx5を使用する場合は少し工夫が必要です。

KDE Plasma(6.0以降)

KDEはfcitx5と最も相性が良い環境です。Wayland-onlyの宣言もしており、X11は廃止していくことが現実味を帯びてきていますが、X11のアプリが動かなくなるということはなく、XWaylandという互換レイヤーがバックグラウンドで動作し、古いアプリの描画をWayland上で肩代わりします。

これだけでKWin(コンポジタ)が適切にfcitx5をハンドリングして、環境変数を手動で書かなくてもほぼすべてのアプリで動作するようになります。

デフォルトデスクトップ環境にKDE Plasmaが多く採用されているのはこういう所にあるのかも知れません。

Hyprland / Sway


ここから見てもこれまでのX11ように環境変数を書くなどというような方法よりはずっと簡単になっているので、Wayland対応のデスクトップ環境を利用するのが得策ではあります。
しかし、まだ問題点もあり、特定のアプリでは追加設定が必要になることがあります。

特定のアプリへの対策

フラグの設定方法

Chromium / Electronアプリのフラグの設定方法は、起動コマンドに引数(フラグ)を追加するのが基本ですが、手動で毎回打つのは現実的ではありません。
Arch Linuxなどの一部のディストロでは~/.config/ディレクトリ以下にフラグ用のファイルを置くだけでランチャーからの起動時にも自動適用される仕組みがあります。

もし、メニューやドックからアイコンをクリックして起動する場合は、システムのショートカットファイルを自分の設定で上書きするという方法もあります。

  1. /usr/share/applications/discord.desktopなどを~/.local/share/applications/にコピーします。これで使用しているユーザーの環境でだけ設定変更することができます
  2. コピーしたファイルをテキストエディターなどで開き、Exec=の行を書き換えます
    • 修正前は、Exec=/usr/bin/discord
    • 修正後は、Exec=/usr/bin/discord --enable-features=UseOzonePlatform --ozone-platform=wayland --enable-wayland-ime

上記のような方法があります。優先順位としては、KDEユーザーであれば何もしなくても大抵は大丈夫で、Hyprlandなどではキーバインドや~/.config/以下に設定ファイルを書いたりして、それらでどうしようもない場合は、.desktopファイルのExec行を書き換える。というような優先順序だろうと思います。

まとめ

ほとんどのLinuxディストリビューションは、英語が主言語として配布されているため、非ラテン言語系の地域の人は大抵それぞれの母国語が入力できる環境が必要になります。

特に日本人は英語で書かれている簡単な単語は読めるものの、本意が掴めない場合が多いので違った解釈をしてしまい、結果、正しく修正できなかったり自分の環境には合わない内容を適用してしまったりがあります。
近頃のディストリビューションは、ローカライズしてあることが多く日本語は読めるので一応使えるけれども、ほとんどのアプリで入力することが多いので日本語が打てないことだけが不便なわけです。
しかし英語圏の人々からしたらすでに英語での入力はできるので、その他の言語でどうかというのは報告がない限り気にもしないところだろうと思います。

IBusが強力に統合されているディストリビューション(特にGNOMEを採用しているUbuntu、Fedora、RHEL系)では、fcitx5を導入するかどうかはとても悩ましい問題です。今回はfcitx5での説明を書きましたが、「IBusが簡単に使えるのであれば」、「それで問題がないのであれば」fcitx5を使用しなくてもいいんじゃないかとも思います。

ただし、それら(Gnome)以外の環境ではIBusの方が設定が煩雑になることもあり、fcitx5を勧めているのは「どのディストリビューションでも」、「操作も」、「アプリ設定も」、同じとも言えるので一貫した方法で様々な環境に対応できると考えるとメリットはあると思います。

今はまだX11もWaylandも混在しているような環境でもある上に、色んなデスクトップ環境がありすぎてどれが正解かを模索している状況でもあると感じています。

つい最近ですが、

というニュースがありました。

これはゲームの話だろ?と思われるかも知れませんが、ゲームというのは動作して当然の商品です。キャラクターが動くだけではなく、ローカライズされた言語での表示、チャットがあるタイトルなら日本語が入力できなければなりません。

こういう事から、現在はバラバラで設定も多少難しくもあるLinux環境ですが、たとえゲームであれどもができるとそれに合わせて作ることができるようになるため、将来的にはIMEのアプリを入れるだけでバックグラウンドで設定は全てしてくれて、何も考えずに日本語入力ができる、あるいは変換精度や入力方法だけがより洗練されたものも選択できるような世界になるのではないかと予想されます。

特にゲームでは日本語入力がLinuxの弱点であるということが表面化します。それらがゲームから日本語の簡単設定・入力の方法が一般化しないといけません。Windowsで言えばDirectX(Direct Input、 XInput、 Text Services Frameworkなど)のようなものが必要になるということです。
Google日本語入力、Microsoft IMEが入っていれば入力はできますよね。細かな設定は必要でしょうが、インストールするだけで入力できる。こういうことが必要になると思うのです。

Linuxに限らず、プレイステーションとセガサターンがでたことでスーファミが消えていったように、XBOXが出たと思ったらWiiだSwitchだと色んなものが台頭し消えていくのです。何が覇権をとるのか、三国志のように関係ない国が統一してしまうことだってありえます。Linuxの現在も似たようなものです。
ただし、Windowsに一本化するというのはいけません。WindowsもMacもLinuxもあっても良いが、基本になる規格は統一すべきという話です。あれがいい、これがいいと色々と素晴らしいアイデアや技術を出し合って形にし、基本はこうしようと「規格を統一する」これが大事です。
それらをそれぞれが使用できるようにする。できた商品で儲ければいいじゃないと。規格を乱立させるのはいかんよと。USBだライトニングだとそれぞれが主張するのは全然ダメと言うことです。

作った人が自分所のが勝っているといいたいのはわからなくもないですけども。

これまでのLinuxでは、Gtk、Qt、Electron、X11がといろんな環境が受け口になっていました。今、LinuxはWaylandに移行する過渡期です。これがWaylandに集約していき、それらをうまく使う仕組みの制定がなされれば、それを基準にアプリが作られたりアップデートされて今以上に便利になるはずです。

それまでは今しばらく耐えて下さい。ずっと耐え続けないといけないかも知れません。きっと良い方向に向かう未来があると希望して。

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