Fedora Cosmic Spinとは
Fedora Cosmic Spinは、Ubuntu派生のPop!_OSの開発元であるSystem76が開発しているCOSMICデスクトップ環境を搭載したFedora Linuxの公式スピン(派生バージョン)です。
COSMICはRust言語で開発された新しいデスクトップ環境で、従来のGNOMEやKDE Plasmaと比較して、軽量でリソース効率が高く、モダンで洗練されたユーザーエクスペリエンスを提供することを目標としています。
COSMICはまだ開発途上でありマイナーなバグに遭遇する可能性はあります。しかし新しいデスクトップを体験したいユーザーや軽量なシステムを求めるユーザーに最適です。特にPop!_OSで人気を博したタイル型ウィンドウ管理の柔軟性をFedoraの環境で試したい方にも適しています。
Fedora Cosmic spinのリリースタイプは?
Fedora Linux本体のリリースモデルは、約6ヶ月ごとに新しいバージョン(例:Fedora 40, Fedora 41, Fedora 42…)がリリースされるポイントリリース(またはタイムリリース)モデルを採用しています。ローリングリリースではなく、短いサポート期間ですがUbuntuなどのLTSなどに比べたら短い期間のサポートではあります。セミローリングリリースとも言われます。
| ディストリビューション | リリースモデル | パッケージの頻度 |
|---|---|---|
| Fedora | ポイントリリース 約6ヶ月毎 |
とても新しい |
| Ubuntu | ポイントリリース 約6ヶ月毎、LTSは約2年毎 |
Fedoraよりは古い傾向 |
Fedoraは、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の上流(アップストリーム)としての役割を担っているため、最新のカーネル、GNOME、およびその他の主要なソフトウェアパッケージを積極的に採用します。なので一般的にUbuntu(特にLTS(Long Term Support:長期サポート) バージョン)と比較すると、より新しいバージョンのパッケージをデフォルトで利用できます。
メジャーバージョンの安定性
Fedoraは6ヶ月ごとの新しいバージョン(例:Fedora41→Fedora42)への移行の間にコアシステムの大きな変更は行こなわず、この期間(約13ヶ月間のサポート期間)は、バグ修正やセキュリティアップデートは提供されるものの、API/ABIを壊すような大規模なパッケージのメジャーバージョンアップは通常行われないため、システム全体としては安定していると言えます。
つまりArch系のディストリビューションのように、パッケージのリリースがメンテナーの検査等諸々が済めば更新可能になるものよりは遅れるものの、Ubuntuほどパッケージの内容が古くなることもないので、逆にある程度の間は現状を維持できて比較的早くに新しいパッケージが利用できるという意味にもなります。
例えばHyprlandなどのRice環境((ユーザーがカスタマイズしたドットファイルを提供してそれを利用する文化))などのように、頻繁に新しい機能が追加されたりと開発が活発なものにはすぐには対応できないものの、安定した内容を比較的長く使用できることにもなり、最新を追いたいと言うよりはその環境を手に入れたらしばらくその環境を保てるという意味合いからも使い方によってはかなり良い更新頻度ではなかろうかと思います。
Rust製であることにメリットはあるか?
CosmicデスクトップがRustを採用している最大の理由の一つは、その言語設計によるメモリ安全性と並行処理の安全性です。
Rustは「所有権(Ownership)」システムと「ライフタイム(Lifetime)」の概念により、コンパイル時にこれらのメモリ関連のバグ(ヌルポインタ参照、データ競合など)の多くを防ぎ、結果として、COSMICは従来のC/C++ベースのデスクトップ環境と比較して、クラッシュしにくい、より安定した(堅牢な)動作が期待できます。
例えば、ウィンドウマネージャ以外に、ファイルマネージャや色々なものが動作しています。GnomeやKDEなどはそれらも安定して連携しています。Rustを使用した最新のβ版のCosmicよりGnomeなどの方が壊れにくいのは言語どうのと言うよりは存在して使用され続けた時間だけのフィードバックがあり、それを修正改善してきた結果です。なのでいきなりそれを超えて行くというのはかなり困難なことですが、それを超えるかも知れないポテンシャルは感じます。
現代のデスクトップ環境は、応答性を保つためにマルチスレッド処理(並行処理)を多用しますが、これはデータ競合((複数のスレッドが同時に同じメモリを書き換えようとして不正な結果を生む))のリスクを伴います。
Rustはモダンな言語であるため、開発者にとって使いやすいツールや機能が標準で提供されています。cargoという強力なパッケージマネージャーとビルドシステムが標準で備わっており、COSMICのような大規模プロジェクトの依存関係管理とビルドプロセスをシンプルかつ効率的に行えます。
これらの利点は、ユーザー体験においては「クラッシュが少ない」「動作が安定している」という形で現れ、開発者にとっては「より安全でメンテナンスしやすいコードが書ける」というメリットになります。
Gnomeとは違うウィンドウマネージャ
COSMICデスクトップ環境のウィンドウマネージャーにはcosmic-compと言う名称が付けられています。ウィンドウの表示、移動、リサイズ、そしてタイル型ウィンドウ管理などの機能を提供する役割を担っています。

画像は拾ってきたものですが、開いたウィンドウをタイル表示している状態です。普通のWindowsのようなスタック表示がデフォルトです。これらは設定でタイリングをデフォルトに切り替えができます。特別な理由がない限り個人的にはタイル型の設定で使うのがベストだと思いますが、これがデスクトップでマウスを使う場合はやや事情が異なるかも知れません。
このようにキーボードでなるべく完結できるように考えられているHyprlandやSwayなどよりは、COSMICのウィンドウマネージャは柔軟に使用できるようになっています。しかし、Hyprlandがそれらができないということではありません。Hyprlandでもやはり同様の操作が可能です。
画面上部にトップバーが表示されていますが、画面下のドックパネルも左右に縦(バーティカル)表示ができます。
更にこのタイリングされた状態からウィンドウ同士をスタッキング、つまり重ねるという意味合いですが、一般的に言うとタブ表示も可能です。例えば上記画像で言えば、右下の2つが左右に並んでいますが、いずれかを選んでSuper + Sでスタッキング可能な状態になり、Super + →で隣のウィンドウにフォーカスを当て、Super + Shift + ←で簡単に合体してタブ表示になるという感じです。Super + Fでいずれかのウィンドウをフローティングさせた状態からもスタッキングができるかもしれません。これは未確認です。
多くの場合、これらタイル型のウィンドウは一度に1画面にたくさんウィンドウを開くというのも可能ながら、別のワークスペースに作業するウィンドウを移動させてワークスペースを切り替えながら作業することになるかと思います。この切り替えがとてもスムースにできるので、大きなディスプレイを用意せずとも切り替えつつ作業できます。
操作
| キー | 動作 |
|---|---|
Super + 左右矢印 |
ワークスペースが切り替わります。 アクティブなウィンドウが切り替わります。右に切り替えていき右にアクティブなウィンドウが無くなると、次のワークスペースに切り替わります |
Super + 数字 |
そのワークスペースに切り替わります |
Super + Shift + 矢印 |
中央にウィンドウがある場合、その方向にタイル表示されます。 新しくウィンドウを開くと中央に重なって開かれます |
Super + Shift + Ctrl + 矢印 |
アクティブなウィンドウが次のワークスペースに移動します |
Super + Shift + 数字 |
アクティブなウィンドウが次のワークスペースに移動します |
Super + Q |
アクティブなウィンドウが閉じます |
Super + M |
全画面とデフォルトのサイズにウィンドウが切り替わります |
Super + J/K |
重なったウィンドウの前後を切り替えます |
Super + R + 矢印 |
その方向に拡大できます。Super + Shift + R + 矢印で同様に縮小します |
ウィンドウ操作
| キー | 動作 |
|---|---|
Super + Shift + K/↑ |
アクティブウィンドウが上に移動します |
Super + Shift + J/↓ |
アクティブウィンドウが下に移動します |
Super + Shift + H/← |
アクティブウィンドウが左に移動します |
Super + Shift + L/→ |
アクティブウィンドウが右に移動します |
※ K/↑ はKキーあるいは↑キーのいずれかということです
システム
| キー | 動作 |
|---|---|
Super |
ファイルのインクリメンタルサーチの入力画面ができます |
Super + A |
アプリメニューが開きます |
Super + B |
ブラウザが開きます |
Super + T |
ターミナルが開きます |
Super + F |
ファイルマネージャが開きます |
Super + W |
ワークスペースと開いてるウィンドウの一覧が表示選択できます。WindowsのSuper + TABのような感じ |
Super + ESC |
ロックスクリーン |
Super + Shift + ESC |
ログアウトするかを選択できます |
Print |
スクリーンショット |
ウィンドウタイリング
| キー | 動作 |
|---|---|
Super + Y |
開いているウィンドウをタイリングするトグルスイッチ |
Super + S |
ウィンドウ同士を1つのウィンドウに重ねられます。タブ表示。 |
Super + X |
ウィンドウがタイリング表示されている時にそれぞれを入れ替えられます |
デフォルトで入っているソフトウェア
Fedora Live環境で確認
| 種類 | 名称 |
|---|---|
| Webブラウザ | Firefox |
| メーラー | Thunderbird |
| テキストエディタ | COSMIC TEXT Editor |
| ターミナル | COSMIC Terminal |
| メディアプレーヤ | COSMIC Media Player |
| 音楽プレーヤ | Rhythmbox |
| IME選択・設定 | Input Method Selector |
| 文書作成 | LibreOffice(Calc/Impress/Writer) |
| ドキュメントビューア | Okular |
| USBメディア作成 | Fedora Media Writer |
| システムモニタ | Gnome System Monitor |
| システムモニタ | System Moniter |
| OSインストーラー | Install to Hard Drive |
| 言語設定 | Language |
| 問題報告 | Problem Reporting |
| システムセキュリティ トラブルシューティング |
SELinux Troubleshooter |
| アーカイバ | Ark |
| スクリーンショット | COSMIC Screenshot |
| 計算機 | Calculator |
| ストレージ管理 | Disks |
| GUIソフトインストーラー | COSMIC Store |
実際にストレージに導入すると他にもいくつか自動で入るかと思いますが、基本的にはこんな感じです。
日本語で使用する場合、IMEの設定が重要になりますが、それらの設定・導入なども既にGUIで設定できるソフトウェアが入っているので、日本語を選ぶだけだとIbusを用いたものでしたが、別でFcitx5などを導入してもそれらもInput Method Selectorで選べるだろうと思います。
COSMICデスクトップ環境を採用したディストリビューション
- Pop!_OS
- Fedora COSMIC Spin
- Fedora COSMIC ATOMIC
- CachyOS
- NixOS
- Arch Linux
- openSUSE
- AerynOS
- Redox OS
- Slackware.uk
- Enterprise Linux 9&10
- Gentoo Linux
- postmarketOS
このように色々なディストリビューションのデスクトップ環境として採用されています。コミュニティエディションのようなポジションのものもあります。
Fedora COSMIC Spin と COSMIC ATOMIC
Fedoraで言うと、COSMIC SpinとCOSMIC ATOMICというものがあります。Spinとつくものは、Fedoraにこれまでからあるデスクトップエディションのバリアント(バリエーション)になっていて、従来通りシステムのコアファイルを含め、全てが書き込み可能になっていています。dnfパッケージマネージャーを用いて、アプリケーションやライブラリをシステムに導入、削除、更新が可能です。いわゆる一般的なLinuxのディストリビューションと同様です。
一方で、COSMIC ATOMICは、Fedora Silverblue、Kinoiteなどの後継のように、OSのコアシステムは読み取り専用で、通常の利用中に変更されることはありません。インストール時に依存関係などに問題があればインストールされません。これらは、Fedoraが推進する、普遍的なデスクトップのコンセプトで変更されないコアシステムの基盤の上にソフトウェアを追加していき、それらコアファイルは読み取り専用にして変更することはできないようになっています。
サンドボックス化されたコンテナとは
権限の適用範囲が決まっている状態で、その中でだけ動作するようにしたと理解してもらってよいかと思います。
このようにサンドボックス化された状態で何かを開発しようとしたとしても、ベースシステムとは別にそれら開発ツールはインストールされ、Toolbxと言うコンテナツールを使って隔離された環境に開発ツールやライブラリなどはインストールされ、それらを通じてのみ開発ができ、ベースのOSの重要なシステムファイルや構成を不用意に変更する権限はありません。
ベースシステムが不変なため、壊れにくく、アップデートで問題が発生した場合でも即座に以前の状態にロールバックできます。もし、マルウェアが紛れ込んでもコアシステムに永続化するのが難しく、セキュリティが向上します。
形状は違いますが喩えとして、Flatpakはファミコンのようなものだという理解が良いかと思います。システムを起動するROMと、ゲームの入っているカセットROMがあり、それらは別の読み取り専用のプログラムが入っています。
COSMICデスクトップ環境が各ディストリビューションで採用されるのはなぜか
例えばFedoraであれば、dnfパッケージマネージャ、Arch系であれば Pacmanパッケージマネージャなどがありますが、デスクトップ環境はデスクトップを構成表示するための環境であり、むしろOSとしてはそのシステム管理であったり構造の、いわゆる中身の方が重要になります。
普段からArch系に慣れているのにFedoraでdnfパッケージマネージャで管理するというのもまた覚えることが増えますし、今まで使ってきた環境をそのままに表示だけ変えられると便利です。これらは例えばログインマネージャの画面、GUI的には起動してID(ユーザー名)とそのパスワードを入れてログインする画面で多くの場合セッションの切り替えができるようになっていて、どの環境で起動させるかを選択できるようになっています。
Windowsのような操作感、つまりはスタッキングしていく(積み重なっていく)ウィンドウマネージャーでやる方が良い作業と、タイリングされていくウィンドウマネージャーでの作業が良い場合と、それらはやる作業の内容によって切り替えられたり、気分で変えたりとか、何かしでかしてしまって一方のデスクトップ環境にはログインしても正しく表示できなくなったとか諸々の理由はあると思いますが、そういう場合に使い分けられていたりします。
例えば従来のGnome環境であったり、Xfce環境であったりは見た目は違いますが同じような操作感でした。WindowsやMacに慣れているとそれらの方が馴染みやすいとは思いますが、実際にHyprlandやSwayあるいはi3、Awesomeなどのタイリングウィンドウマネージャを使用すると、それらがとても邪魔くさい方法であったことに気が付きます。
例えば昭和の頃であればわざわざTVの前まで行ってチャンネルを物理的に回していました。しかしそれはリモコンとなり、ソファーに座りながらボタンを押せばチャンネルが変わるようになりました。ここで普通なら十分ですが、さらに現代ではAmazon Echoのようなデバイスに、チャンネルを変えて言うだけで変わったりしています。
これらはPCあるいはOSの挙動にも同じようなことが言えます。COSMICが選ばれるのには、従来のデスクトップ環境で良いはずではあるけれども、更にそれらを便利にするものがそこにあるからなのです。
実際にSSDに入れてCosmicを試すと、これはFedoraとArch系の構造の違いなどもあるかもしれませんが、Cosmicのデフォルトの状態ではArch系でHyprlandを動作させウィンドウを開くのは遅いように思います。Gnomeなどよりやや速いぐらいでしょうか。
まとめ
COSMICデスクトップ環境はスタック型とタイル型のいずれも使え、従来の方法とこれから方法との中間のような存在です。
それらは内部の話なのでユーザー側には大した違いとして見えるわけではないものの、それらを利用したソフトウェアとそれらの進化は直に体感できるものになります。今はまだこれまでにあったものをこれまで通りに動作させると言う意味合いが強い時期ではありますが、それらが普通になった時に更なる進歩があると思うわけです。
今からLinuxに触れる人にいきなりHyprlandの環境を入れろと言ってもそれはかえって逆効果にもなりかねません。操作方法も導入方法も難しいからです。操作は使っているうちに慣れるとは思いますが、その導入や設定はすぐにできるものではないかも知れません。
そのために仕方なくMintやUbuntuを勧めるしかないというのがこれまでの定番ではありました。しかしこのCOSMICデスクトップ環境はそれらとHyprlandなどの中間にあり、どちらにも近いものになっています。これであればまだ完全に安定版ということではないでしょうが、十分初心者にも勧められるものであると思うのです。
システムの更新も従来通りで、何か特別な追加の操作をする必要もなく、うまく使用できればそれだけのポテンシャルはあると思うのです。
上記動画は本家Pop!_OSとFedoraの各Cosmicデスクトップの比較をしています。動画の各動作は早送りではなく実際もこれぐらいです。これはおそらくデスクトップでマウスを使って操作している部分が多いと思います。オートダビング版なので日本語音声になっていますがわかりにくいとは思います。
各フォーラムや動画などを見て、活発な所からはじめても良いですし、既に何かのディストリビューションを使用していて、それに慣れているのであれば同じような系統からCOSMICデスクトップ環境を採用しているものを探して下さい。きっと、新しい体験ができると思います。