ゆっくり弾くの勘違い
大体の場合、最初はゆっくりのテンポで弾いて徐々にテンポアップしていきましょうと教えるのが普通です。しかしそこには大きな勘違いがあって、壁ドンぐらいに意味を勘違いしたまま間違って広まっているように思えます。
もちろん一番はじめは何も知りませんからゆっくりと確かめつつコードはこれだ、弾き方はこれだとやるのには違いありません。教える側も何をしているかゆっくり弾いてみて、何をしているかを見てもらわねばなりません。
しかし例えば当サイトのように文字で読んで理解するのは大変ではありますが、ゆっくり弾いてもらった方がマシとは言えそれは確認であり、初期情報を覚えてるだけなのです。
コードをいくつか覚えたての初心者は、頭ではTVとかMVで見たミュージシャンと同じように弾きたいと思いながら、手がついてこないのでゆっくり弾きます。それは間違いではありませんが、それを何度繰り返した所で同じように速くは弾けないのです。
ある時に、弾きたいと思う速さで練習をしなければ速くは弾けないのです。
つまり、化粧品とかの工場内で箱に注文の商品を詰めていく作業とかで詰めるのがめちゃくちゃ速いおばちゃんとか、格闘ゲームとかで操作がめちゃくちゃ正確で速い人もおそらく同じと思いますが、何かしらをきっかけに、速くその作業をする時があり、やってみたらできたと言う経験を元に、何度か繰り返していく間にその速度で作業ができるようになったと思います。
ベルセルクを無理やり場面に当てはめてみる
漫画ベルセルクで、イシドロと言うキャラクターが主人公のガッツに剣の特訓を受ける時の会話です。
- イシドロ
- 「なぁ、ほんとにいいのか?これで
- ガッツ
- 「何が?
- イシドロ
- 「普通、修行っていや、長い間時間をかけて基本を繰り返したり技を伝授したりするもんじゃねェのか?いいのかよ?シロウトのオレがこんな思いつきの即席戦法 身につけちまって
- ガッツ
- 「基礎なら毎日やってんじゃねェか
- イシドロ
- 「けどよォ!
- ガッツ
- 「第一 お前がオレのマネしたところで始まんねぇだろ?ガタイが違や 戦い方も違うってもんだ
- ガッツ
- 「それともお前 何十年も修行して達人になるのを待ってから戦場に出るつもりか?気の長げェ話だな
三浦建太郎「ベルセルク」第24巻から
これ!まさにこれ。
ガッツは、木に吊り下げられた母親の躯から生まれます。泥水にまみれて生まれ、傍らを通った傭兵団に拾われなければ生き延びることはなかったでしょう。傭兵団に拾われてからもまだ少年の内から戦場に出て若い内から幾度も死線をくぐり抜けその都度強くなってきたわけです。
だからこそ言えることかも知れませんが、そこまでギリギリな状態ではないにしろ、剣とギターを置き換えたとしてもこれなんです。
例えばFを弾けない場合「6弦から1弦に向けて1本づつ弾き下ろしてどの弦が鳴ってないか確認してみて下さい」と言う事を書いたと思います。これはあくまで確認です。それだけした所で弾けるようにはなりません。
一方で、ある時突然弾けるようになった、と言うような経験をした人も多いと思います。これは弾けないながらもその形で弾くことを繰り返して何かしらのきっかけにコツみたいなものを見つけて弾けるようになったと言う事だろうと思うわけです。
その「何かしらのきっかけ」をこうだと答えるのは難しいのですが、弾けなくてもそのポジションに指を持っていく、弾けなくても本来のテンポで弾ききると言うのは、それまで体にないことを体に覚え込ませるというかきっかけを与えるトレーニングとしてはとても有効です。
例えばマラソンランナーのトレーニングでスクーターみたいなものに引っ張ってもらってスピードを覚えるトレーニングをするとか、古いゴルフ漫画ですがチャー・シュー・メンのタイミングでグラブを振るとか、自衛隊でも重い荷物を背負って何キロも歩くとかの訓練をしたりもします。その事自体には意味はないのかも知れませんが、それをすることでできるようになることもあるわけです。やったこともないのにできるようになるほど見たまま考えたままを実行できる人はそうはいないと思います。
当サイトで書いたパワーコードで「コードの位置をすぐに発見するために、6弦と5弦の音の配置を覚えましょう」と言うのもそういう事なのです。コード自体が弾けずともそのポジションにその手の形を持っていくのが大切です。
もちろん、その前情報としてFとはこうだと押さえ方を知っていなければいけないことは確かですが、覚えるためにゆっくり弾くと言うのは練習とはいいにくいと言うのは覚えておいて下さい。
大事なのはテンポとリズムキープ
これらを踏まえた上で、以下の動画を見て下さい。
色んなページで掲載しているTommy Emmanuelおじさんの動画ですが、ギターを弾いている時に左足が常にリズムをキープしているのがわかるでしょうか?
一部の狭い世間では、本体は左足とも言われていたりします。
右手で弾いて左手でコードを弾きながら更にベースとメロディーも組み合わせてかつ左足でリズム!そんな一度にできるか!と言われそうですが、ベース音とメロディーを無くせば案外イケるものです。なぜなら、ギター無しで鼻歌で歌う時、膝を叩いたりしたり、手を叩いたり何かしらでリズムを取ることができるでしょう?
一度にできないのはギターがまだ楽に弾けないからであって、リズムを取ること自体は歌いながらできるはずです。つまりギターにさえ慣れてくればリズムを同時に取ることはできるのです。そうなってくるとむしろリズムをキープすることがまず大事になります。そこに合わせてギターを弾く必要があります。
ギターを弾き語りすると歌にギターを合わせがちになります。あるいはその逆もあります。もしリズムを取ることをないがしろにしてしまうと、メロディーが走ってしまったり遅くなってしまったりしてしまいます。これをなるべくなくすことがとても大切です。
更に、究極に慣れてくるとやたら速く弾きたがちです。これもある程度は許容範囲ですが速すぎるのもあまり良くはありません。なので原曲を聞いてリズムを取る練習もして体で速さを覚えるべきです。それを足踏みなどをしながら再現してそこにギターを合わせていくわけです。