コード「B」と「F」について

ギターを演奏するにおいて、あるいは初心者に対して最初の難関がこの「B」と「F」だと思います。実はこの二つのコードを覚えるだけでほとんどの曲を弾くことができるのをご存知でしょうか?

Hidekichi| [

ギターを演奏するにおいて、あるいは初心者に対して最初の難関がこの「B」と「F」だと思います。実はこの二つのコードを覚えるだけでほとんどの曲を弾くことができるのをご存知でしょうか?
もっと正確に言うと「A」と「E」を弾くことができればいいわけですが、開放弦の制約があるために「A」と「E」では少し足りません。
なぜ「B」と「F」なのかを説明していこうと思います。

まずはじめにセーハー(バレー)について説明します。

セーハーとは:
セーハー(Ceja: スペイン語)というのはひとつの指で複数の弦を押さえることと理解して下さい。どちらかというとクラシックギター界隈などではこちらが使われ、昔の教本はクラシックギターをしていた人が書いていたことなどからこちらが使われることが多かったらしいですが、現在では一般的にバレー(Barre: 英語)と言われます。棒や横木と言う意味と言うことです

以下にある図では、それぞれ指板上で(黒い)直線で表示しています。
「コードB」の場合などは人差し指と薬指でバレーを二つ入れることもできます。

3・4弦4フレットを薬指で小バレー

コードB

コードBの場合、人差し指のバレーと3・4弦の4フレットを薬指で小バレーし、2弦4フレットを小指で押さえると、薬指の小バレーが少し難しいですが、指が開きやすくなるので慣れてしまえばこの方法が良いかもしれません。
もしくは、2~4弦4フレットをすべて薬指で小バレーしても良いのです。

Fと違ってBのコードフォームはどうしてもバレーしている人差し指とその他の指が離れる(広がる)ために、バレーしている人差し指に力が入りにくい場合があります。

そういう時はAを作っている3・4弦4フレットを薬指でバレーすることで、中指がフリーになります。これをバレーの補助として、バレーしている人差し指の上からフリーになった中指で押さえてしまうのも一つの手です。

Bコードフォームでは6弦はミュートでOK

コードF

上記のように普通にバレーの補助として中指でバレーしてる指の方に持って行くと、より指が広がりにくいと思う場合もあるかと思います。イメージとしてはコードを押さえている方の腕の肘を内側に入れるようにして、バレーしている人差し指の外側側面の硬い部分を利用したりします。
肘が内に入ることでコードを押さえているフォームはやや外向きになるでしょう。

バレーしている人差し指を中指で補助する際も、全体的にバレーの補助をするのではなく、イメージ的には指先で5弦2フレットを意識して、1・2弦2フレットを重点的に押さえられるように意識してみて下さい。

Bコードフォームではベース音が5弦に配置されているので6弦は軽く触れているだけのミュートで問題ありません。

セーハー(バレー)の考え方

セーハー(バレー)で足止めを食らっている場合は、考え方としてこう言う事が言えます。既にコードの説明をするところでも書きましたが、より手前で押さえている弦が鳴っているわけですから、その奥で押さえている弦は本来押さえなくてもよい弦であると言うことです((手前:サウンドホール側、奥:ヘッド側))。下の図で言い換えてみれば、2フレットの2・3・4弦はすでに4フレットで他の指が押さえているので押さえなくてもいいという意味になります。

と、言うことは例えば、1弦2フレットを押さえて、4フレットの指はそのまま押さえた場合、5、6弦は弾かなくとも「B」であるということが言えわけです。
ギターのコードは右手でピッキングしない弦は押さえなくてもいいわけです。初心者の内は律儀にコードブックなどに書いてある所を全部押さえようとしてしまいますが、鳴らさない箇所は押さえないのが楽に弾けるコツです。とは言うものの、そういう状態で弾くとだいたい不要な所が鳴ってしまうので、ミュートと言うのはとても重要な技術なのです。

次いで「コードA」と「コードB」の関係を説明していきたいと思います。下図で「コードB」をみて下さい。

人差し指のセーハーが例えば0フレットに並行移動したらどうだろう?答えは「A」である。

コードB
コードF

アルファベットとドレミ対応表、プラスα

CDEFGABC
ファ
全音半音全音半音
全音全音全音
CC#/DbDD#/EbEFF#/GbGG#/AbAA#/BbBCC#/Db
ド#/レbレ#/ミbファファ#/ソbソ#/ラbラ#/シbド#/レb

以前にも書いたようにギターはフレット1つ飛ばしで次の音になります((ミ←→ファ、シ←→ドを除く。全音と半音も参考に))。そして、アルファベットとドレミ…の関係も前に書きましたが、もう一度おさらいとして書いておきます。

上記の表からもわかるように、「B」の前の音は「A」なので、「A」が「B」の基本形となります。
同様に「F」を見ていきます。「F」の場合人差し指のみセーハーであり、もしこの人差し指が0フレットであった場合に残った中指から小指までがどのような形になっているかを考えてみて下さい((E→F(ミ→ファ)は半音だけ上下するので、すぐ隣のフレットに移動することになるのは、すでに理解しているものとして説明する))。答えはEになります。
つまり「E」が「F」の基本形となるわけです。

前述したようにギターは「E」と「A」さえ覚えればとりあえずほとんどの曲が弾けてしまいます。
そしてもっと正確に言うなら、開放弦の制限の関係から全弦を押さえるセーハーを含む「F」「B」を使用すればほとんどの曲ができてしまうわけです。

では、これからどうしてこの二つのコード(「F」と「B」)が基本形になるのかを説明していきます。

同じバレーからコードチェンジできるコードの例(「F」の場合)

コードの種類メジャーマイナー
押さえ方コードFコードFm
コードの種類セブンスマイナーセブンス
押さえ方

この上の図から理解してほしいのは、押さえる指を付け加えたり、また離したりすることでとりあえずは4種類のコードを押さえることができるという事です。
「F」の場合、その基本は「E」なので、この1フレットのセーハーをなくして、中指から小指が1フレットにズレたと考えた時、残った指の形はEですから、その状態から中指を外せばEm、薬指だけ残せばEm7になるのが理解できると思います。

例えば「Gm」や「G7」をハイポジション、つまりセーハーを含むポジションで弾く場合は3フレットを人差し指でバレーするようにして「F」のコードフォームにすれば、考え方は同じでマイナーや7thのようなコードの種類が押さえられるのも理解してもらえるだろうと思います。

前にChordBasicの中で、6弦と5弦の音の配置が重要だと書いたのはこういう事に繋がるわけです。パワーコードで素早く位置を見つけるという事にも繋がっています。

こういう事から「F」や「B」を押さえられるようになると、もっと高度な弾き方ができ、かつ、より便利になるというわけです。

ただし「F」や「B」と言うコードは生半可な練習では習得できません。もちろん慣れもあるでしょうしコツもあります。あるのですがそれは文字やクチで伝えるのはなかなか難しく、最初は上手く弾けないかも知れませんが、弾けないから諦めてしまうのではなく、押さえるための他の方法を考えたり、弾けないまでも素早くその位置に移動できるようにしておくことが大切です。

まず、つまづくポイントとして、バレーが問題になる場合が多いです。バレーさえできてしまえば、残りの指は「E」や「A」と同じ押さえ方でいいわけですから、すぐに弾けるようにもなるでしょう。

初心者にとってバレーはとにかく難しく、それであるがゆえにこの部分で挫折してしまう人が多いですが、どこを押さえるべきかを理解できていれば、どこで手を抜けるかもわかるはずでFを押さえている時に3・4・5弦の事など考えずに1・2弦と6弦だけ人差し指で何とかできればとイメージできるはずなのです。

コードチェンジの鉄則として、**できないならできるようにして弾く!**というのが重要です。それでもダメな場合は、Fなら「Fmaj7」を押さえ、1,6弦は鳴らさなければ「F」として弾けると言うような考え方をします。

ただしこれはあくまで代用なので、やはり正規の「F」を押さえられるように努力することが大切になります。

何度か練習しているうちに形だけなら「F」や「B」のポジションを押さえられることができるでしょうしそれは押さえられるようにする為のポイントでもあるのですが、形だけできていてもダメなのがギター。
そこでめげずにそのまま練習を続けていると、いつのまにか音も鳴るようになってきます。

鳴らない場合はどの弦が鳴っていないのか、あるいはどうすれば鳴るのかをじっくりと研究することが大切なのです。

同じバレーからコードチェンジできるコードの例(「B」の場合)

コードの種類メジャーマイナー
押さえ方コードbコードbm
コードの種類セブンスマイナーセブンス
押さえ方コードb7コードbm7

上図B(左上)では4フレットを薬指の小バレーで押さえても良いですし、4・3弦4フレットはそれぞれ人差し指、中指、そして2弦を小指でもどちらでも構いません。
ただし、この方法だと人差し指と中指をかなり離さなくてはならなくなり、初心者のうちは難しいと思います。指を自由に動かすとは別に開くと言うのは生まれながらに開く人は良いとして、そうでない人はすぐに開くものではないのでBはそういう意味でも難しいわけです。

要は、方法うんぬんよりも、結果として2フレットバレーでコード「A」を作れば良いだけの話なのですが、最悪コードチェンジが間に合うなら7フレットバレーのFコードフォームで問題ありません。

圧倒的に縦移動の方が速いですが、楽曲によっては7フレットバレーのFコードフォームの方が良い場合もあるのです。例えばEbやCmに移動したりする場合とかに。

「B」についても「F」についてもまずはその基本の「A」や「E」を練習してみると良いと思います。後はアルファベットとドレミ対応表・プラスαでも書いたように、全音・半音を理解して、目的のフレットへ人差し指を移動すれば良いだけです。なんせ形は同じなのですから。

コードBmとFm

コードB
コードFm

上図左がBmです。「B」がメジャー(長調:明るい和音)に対して「Bm」はマイナー(短調:暗い和音)になります。では、「B」FIXとどこがどう違うかを見比べてみて下さい。
答えは簡単です。4フレットにあった小指で押さえていたものが3フレットの人差し指(レ#→レ)に半音下がっただけなのです。たったこれだけでメジャーからマイナーになります。

と、言うことは「B」の基本である「A」も同様に、同じように(バレー部分を0フレットと考えて)移動するとメジャーからマイナーに、あるいはその逆になります。

上図右がFmです。「F」FIXの時と見比べてみるとどうでしょうか?
そう、中指を離した状態ですね。もちろん「F」もその基本である「E」とバレーがあるかないかの違いしかないわけですから、「Em」も「E」の状態から人差し指を離したものが該当します。

どうして「B」「F」をこのページで説明したかと言うところを説明していきます。まず「F」が弾けると仮定して話を進めます。

「F」は1フレットをバレーにしたEですから、開放弦がありません。
「コードF」→「コードG」(ファ→ソ)に移動するためには、全音分、音を上下する必要がありますがバレーしているため開放弦の制限もありませんからそのままの形でズラしていけば1~6弦全体的の音が上下します。

この時、重要なのは6弦の音の配置です。6弦の開放はE(ミ)です。1フレットをバレーすると6弦の1フレットを押さえるのでF(ファ)になります((全ての音は1つ飛ばしで次の音に上がったり下がったりしますが、ミ<->ファ、シ<->ドの所だけ1つズラし、つまり半音階で次の音になります。ここからE→Fはミ→ファなので、0弦開放音から1弦を押さえてミ→ファとなるのです))。
このように、6弦の音の配置がわかっていれば後はFのコードフォームで弾くだけで目的のコードが弾けるようになります

7フレットのFコードフォームはBとすぐに言えるのは、単純に6弦の音の配置でそこがB(シ)だからなのです。

この事からアルファベットとドレミの関係6弦の音の配置が重要なことがより理解してもらえると思います。Bコードフォームの場合は5弦の音の配置となります。

そして、メジャー、マイナー、セブンス、マイナーセブンスと、コードのタイプは指を付けたり離したり入れ替えたりとで対応できますから、このことがわかればコードについては6割は成ったも同然です。

そのままの考えではうまく行かないF→Bb

しかし、この方法でコードを移動する際には少々やっかいなことが起こります。それは、例えば「F」から「Bb」に移動する時などです。
「Bb」のポジションは6フレットの「F」の形なので、1フレットからいきなり6フレットに飛ばなくてはならず、慣れてしまえばそのぐらいの移動は全く問題なくできますが、初心者の場合できるだけ近いフレットでコードチェンジをする方が簡単で、かつ素早くできるという理由があり、そのためには、どうしても「B」を2フレットで押さえられるようになることが必要になります。

なぜなら、「Bb」は「B」の半音下の和音ですから、2フレットで押さえていた「B」を1フレットにズラすだけで良いわけです。
「F」→「Bb」の場合、人差し指のバレーはそのまま、残りの中指、薬指、小指をそれぞれ「E」から「A」に変えるだけで「F」→「Bb」にコードチェンジができます。

F→Bbへのコードチェンジ

FからBbへのコードチェンジ。横移動
FからBbへのコードチェンジ。縦移動

どうでしょうか?どちらの方が簡単に思うでしょうか?

1フレットから6フレットにポジションを飛ばして同じ形を維持するか、それともフレットのポジションはそのままで、残りの指だけ変えるか、好みは個人差があるので、どちらを薦めるべきかは言えませんが、どちらが素早くコードチェンジができるかと言えば、やはり同フレットで形を変えるだけの縦のコードチェンジの方が速いわけです。

どちらの方法を使用したとしても結果は同じだと言うことから、個人の好みによってどちらを選択しても構いません。
場合によっては、次のコード進行によって6フレットまで移動した方が良いこともあり、全体的に考えて選択することになります。
最終的にはどちらのポジションでも押さえられるように練習して下さい。

バレーの移動はポジションマークを参考に

移動するフレットの数が多くなると、すぐに目的のフレットを見失う事があります。そんな時は、フレットに書いてある「ポジションマーク」を参考にします。

だいたいの場合、3フレット、5フレット、7フレット、9フレット、12フレット、15フレット、17フレット、19フレットあたりについていると思います。

また12フレットは二つマークがついていたり他のマークと違うものがついていたりします。
通常のギターでは12フレットの位置が0フレット~11フレットの位置との指板上の音の並びの境となります。もちろんここには開放弦の制限があります。0フレットがナットによって開放弦を鳴らすように、そのかわりに12フレットを(開放弦として考えて)押さえると12フレット以降の音の並びは0~11フレットまでと同じになるということです。

同じ並びで押さえられるということは、同じ弦上でつまりは1オクターブ高い音が鳴っているとも言えます((5弦開放はA、ラの音が鳴っていますが、5弦12フレットでは1オクターブ高いA、ラの音が鳴っているということです))。ハードロックでギターソロをしているプレイヤーが、12フレット~あたりで速弾きをするのはそう言うのが理由です。

少しわかりにくいですが、もう少し言うと12フレットにカポを装着したとします。するとそれぞれの開放弦は、カポを装着していない状態の開放弦よりオクターブ高くなります。
1弦1Fのファのオクターブ高い音は1弦13フレット。1弦開放のミは1弦12フレットと言うことです。オクターブ高いメロディーを弾く場合はこれらを参照すると良いでしょう。

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