これまでの流れ
以前から長時間のスリープから復帰後、文字入力ができないなどと当サイトのいくつかの記事で報告していました。
- DankMaterialShellを使用中でシステムの更新によりHyprland v0.53.0あたりでエラーが出ている場合に
- 最近色々な所で紹介されているMangoWMがDank Material Shellで使えるようになっているので早速使ってみよう
- Waylandコンポジターでキーが時々効かなくなる場合のfcitx5の設定
等が、該当の記事などです。
- Dank Material Shell(DMS) v1.5になってから、長時間のスリープ復帰後文字入力ができなくなった
- 同時期にPlasma、GNOMEがWayland対応となり、GNOMEはバージョンアップ直後、入力のための拡張機能(KIMPanel)の未対応などもあり、入力問題の原因がどこにあるかの切り分けに時間がかかる
- GNOMEの拡張機能はまもなく修正され、現在は「問題なし」
- Plasmaはfcitx5の対応が安定しているので、Plasmaに入れ直してどうなるかを確かめるが、入力問題はこれらやWayland対応とは関係ないのが判明
- DMSはv1.4の時には何ともなかったので疑いもしなかったが、DMSもv1.5になっており細かい部分で修正があったのは知っていた
- Fcitx5を終了するとDMSなどは正しく動くのに気がつく(フェーズ1)
- Fcitx5が問題か?と疑う
- fcitx5を終了するとHyprland自体は正しく動く。トレイアイコンからは再起動できない
- 同時にテキストエディター上で、←矢印やバックスペースキーを押しっぱなしにすれば直るというのも判明
- Fcitx5のアドオンの設定をできるだけWayland寄りにしてみたらどうなるだろうか?(フェーズ2)
- 挙動が変わり、Hyprlandの操作はできるようになるが、キー入力ができないという状態になる。同時にトレイアイコンの再起動で入力ができるようになる
- 入力ができないキーでもHyprlandの操作はできると言う不思議現象が起こるようになる
- 同時期にPlasma、GNOMEがWayland対応となり、GNOMEはバージョンアップ直後、入力のための拡張機能(KIMPanel)の未対応などもあり、入力問題の原因がどこにあるかの切り分けに時間がかかる
- Fcitx5チームに状況を報告する
- Fcitx5はコンポジターからの情報を受けているだけなのでコンポジター側が怪しいとコメントを貰う
- その後、わざわざDMSのソースコードを見に行ってもらえて、クリップボードあたりが怪しいんではないだろうかとアタリを付けてもらえる
- DMSチームにFcitx5チームとのやり取りを報告する
- 本来の仕様ではおかしい部分はないが、もう少し細かく見てみますというコメントをもらい、その後修正が入る
- DMS v1.6で報告していた修正が適用。普段通り使用しても問題の再発は今の所なく(Hyprland環境でテスト) 、問題は解決したと思われる
こういう感じの流れでした。
DMS v1.6でDMSチームに報告した問題の修正は適用されていたのですが、CachyOSの配布がすぐに行われず(おそらくv1.6が控えていたため)、私の確認では2026/9/12にパッケージの配布がありました。
テストをして状況を確認
パッケージ(dms-shell)が配布されてから、どのようにしてテストをしていたかと言うと、
- Waylandコンポジターでキーが時々効かなくなる場合のfcitx5の設定で書いたアドオンの設定はそのまま(Wayland寄り設定)
~/.config/hypr/hyprland.luaからGTKの環境変数、hl.env("GTK_IM_MODULE", "fcitx")を取り除き(コメントアウトして)テスト
上記の内容で、Hyprland環境から再ログインした後、普段するようなことをしてそのままスリープに入り、翌夜再度同じ事をしてテキストエディターで入力できるかを確認(→ 入力確認)。
私の環境では時間がかかる検証なので他のコンポジターでも問題が解消しているかは今の所未確定ですが、DMSのクリップボードのfixによって直っているので、ここから他のコンポジターでも問題ないだろうという見立てです。
Dank Material Shell v1.6(Marble Tabby)リリース
→ DMS 1.6 “Marble Tabby” Is Here(英語)
アップデートされたDMS v1.6系の内容はおおまかに以下のとおりです。もっと詳細は英語ですが公式のアップデートノート、あるいはドキュメントを参照してください
新デザインのダンクアイランド
v1.6での目玉機能は、Dank Island(ダンク・アイランド)と言うデザインバー(パネル)で、新しいスタイルとして、AppleのDynamic Islandにインスパイアされた Dank Island モードが追加されました。

中央にあるIslandとその両側にウィジェットで構成されるSatellite(サテライト)が配置されます。表示する内容によって形状がリアルタイムに変化・アニメーションします。
DMSの設定画面からGUIで選択するだけで簡単にバーの表示を変更できるようになっています。上記画像で言うと、最初に開いたアイランドの上部にある歯車アイコンから「設定に入れます」。あるいはSUPER + ,でも開きます。
他の改善点
劇的なパフォーマンス&リソースの改善
目玉的なわかりやすい部分は、Dank Islandですが、素晴らしい更新としては劇的なパフォーマンス&リソースの改善です。
| 項目 | 改善内容・数値 |
|---|---|
| メモリ消費(アイドル時) | 約 19% 削減(マルチモニター環境で約 76 MB 軽量化) |
| IPC(プロセス間通信) | 5.2倍〜8.9倍 高速化(キーバインドのレスポンスが劇的に向上) |
| スクリーンショット | 最大 8.6倍 高速化(独自の高速PNG/JPEGエンコーダーを採用) |
| カラーピッカー(色選択) | 3.9倍 高速化 |
元々が高速に動作するため、より軽量・高速になっても体感はしにくくはありますが、軽量で速くなることは負荷も減る事からマシンパワーが無いPCでも軽快に使用できるようになったとも言えます。SUPER + Eを押した瞬間にもう開いてます(PC環境・設定にもよりけりかも知れません)。
上記の表からわかる事としては、通常たくさんのプラグインを導入するほど重くなって行くものです。それらはだいたいIPC通信のオーバーヘットが課題でした。
スクリーンショットツールの高度化
処理速度だけではなく、機能面も大幅に強化されました。
- マルチモニター領域選択: 複数ディスプレイにまたがる領域の選択に対応。
- 選択操作の改善: 選択範囲のサイズ変更や移動が直感的に行えるように刷新。
- スクロールキャプチャ: 初期段階のスクロールキャプチャ機能を実装。
- 10-bit / HDR対応: Waylandの wp_color_manager_v1 プロトコルによる10-bitおよびHDRコンテンツのキャプチャに対応。
よく使用されるgrimのような定番ツールではCPUのシングルコアでスクリーンショットによる画像の処理をしていましたが、マルチコアをフルに活かすことで約5倍近く高速にキャプチャができるようになっています。
DMSの設定の下の方にプラグインの項目があるのでそこで、プラグインディレクトリを作成しプラグインブラウザから好みのキャプチャープラグインを検索して使用するのが良いかと思います。例えばQuick Captureなど。picture/ディレクトリなどが設定されているのではなかろうかと思います。それを画像/などと保存する場所を変更する必要がある所だけかと思います。
GTK3 ダイナミックテーマ対応
adw-gtk3 がインストールされている環境では、GTK3アプリがDMSの生成したカラーパレット(動的テーマ)に自動追従するようになりました。
- アプリを再起動することなく、ライトモード/ダークモードの切り替えがリアルタイムに反映されます。
以前、事前に必要なアプリ(例えばファイルマネージャーのThunar等)をインストールしておくのが大事だというようなことを書きましたが、新規インストールで試していないので確かなことは言えないまでも、おそらくは後からの導入でもそれらが正しく適用されるようになったのではなかろうかと思います。
必要に迫ったら以下からインストールはできます。(→ 公式ドキュメント)
# Arch
sudo pacman -S adw-gtk-theme
# Fedora
sudo dnf install adw-gtk3-theme
# NixOS
environment.systemPackages = [ pkgs.adw-gtk3 ];
ネットワーク機能の強化
- Wi-Fiホットスポットの作成に対応
- NetworkManager経由でのセルラーモデム(SIM/LTE通信)をサポート
- 802.1X認証やOWE(Opportunistic Wireless Encryption)暗号化Wi-Fiへの対応強化
Dank Desktopスイートのバージョン統合 & 独立グリーター
DMSは単なる「Waylandシェル」から、包括的なデスクトップスイート(Dank Desktop)へと進化しています。
- DMS本体、
dsearch(検索ツール)、dgop(システムモニター)、dcalendar(カレンダー)、dgreeter(ログイン画面)がすべて v1.6.0 として統一されました。 - ディスプレイマネージャー用の
dank-greeterがDMSから完全に分離され、単独のコードベース・プロジェクトとなりました。 - スイート全体のツールで「FreeBSD」がサポートされるようになりました。
プラグイン・テーマエコシステムの拡充
- 公式レジストリにはすでに 335以上のプラグイン と 42以上のテーマ が登録されています。
- プラグインブラウザのデザイン刷新、ポータブルなロックファイル(lockfile)管理、マルチレジストリ対応、プラグイン個別の多言語翻訳に対応しました。


左からテーマブラウザ、プラグインブラウザ。
念のためのインストールスクリプト
新規インストールする場合、こちらをターミナルに貼り付けて、いくつか項目を選択するとインストールすることができます。
curl -fsSL https://install.danklinux.com | sh
設定は当サイトの様々な記事で書いていますが、おそらくMintやUbuntuをWindowsの代替に使うのは止めてFedoraにしとこうの下の方に書いてあるDMSの設定が今の所一番新しい設定ではないかと。CachyOSのものとは違いますが、設定する内容は同じです。
設定をもっと詳しく知りたい場合、英語ですが公式ドキュメントを参照してください。v1.6でのドキュメントになっています。
まとめ
DMS v1.5の間、長時間スリープからの復帰後、日本語入力のみならずキーボードからの入力が一部(またはほとんど)ができなくなってしまうというPC操作の根本に関わる部分の問題が、今回のDMS v1.6で解消されたのは喜ばしい限りです。
英語圏の開発者やユーザーにとっては、IME(text-input-v3)や仮想キーボードのプロトコルが裏でデッドロックを起こして文字入力が死ぬという現象は、そもそも発想にすらない「特殊な環境の、縁遠いバグ」として処理されがちです。
Waylandエコシステムとは
「Wayland」を中心に構成される、ソフトウェア、ライブラリ、ツール、および開発者コミュニティ全体のつながりで単にWaylandという「規格(プロトコル)」だけでなく、それを動かし利用するための周辺技術すべてを含んだ生態系という意味です
DMSが「マルチディストロ・多言語対応」を謳う以上、入力ができなくなる不具合は非英語圏のユーザーにとって、単なる「些細なエッジケース」ではなく画面の非表示・操作不能に等しい最優先の欠陥であるべきだと考えます。
いずれにしても再起動で直ったり、fcitx5を使用しているユーザーで毎回シャットダウンをしている人からしてみると、長時間のスリープの復帰後の問題と言うのは些細な事だったかも知れません。
当たり前の状態にまずなることがスタートで、そこから機能や便利さの評価ができると思うのです。
DMS v1.6はこれまで以上にメモリ使用量も減り、軽快になるアップデートが中心だったと感じましたが、それはどのアプリを使用しても損することがないアップデートです。
PCと言うハードウェアを共有してデスクトップ環境を選択できることは、自分のやりたいことを使い分けるための最適な方法です。
PlasmaもGNOMEもタイル表示はできません。なのでDMSを利用して更にHyprland、Niri、MangoWM、その他などで更に利用の幅を広げるのが良いかと思います。
ぜひ普段遣い最強のタイル型ウィンドウマネージャーの操作をこの機会に体験してみてください。