新しいものは「従来のものに慣れすぎていると」なかなか受け入れてもらえない
「こんなに良いのがありますよ」と新しいものを勧めても、従来のものに慣れすぎていると「そんなものが良いはず無いだろ」と言われることはしばしばあります。
なぜ同じ事を言っているのに信用してもらえないか、その1つの理由は自身で試してもいないからです。「いっぺん騙されたと思って食べてみて」と強く押されて嫌々でも食べてみると、「(思っていたよりも)おいしい……」となるようなこともよくあります。
誰かの経験が、自分に役に立つ経験とは限らないわけですが、大体の場合は良いことの方が多いようにも思います。駄目な結果だとしてもそれは他人のせいにもできますし。
LinuxではX11の時代が長すぎて、ぽっと出のWaylandなど「なにそれ、オイシイノ?」ぐらいの扱いを受けたりすることもあります。当サイトでも「Waylandが良いですよ」と宣伝したとしても私の影響など皆無なので、誰ぞ声の大……影響力のある人が代弁してくれると良いのですが、なかなかに波及しません。
しかし徐々に、「あれ?別に何も問題ないんじゃ」程度には使用した人たちには理解してもらえてると思います。
細かいデータを提示しないほうが悪い
どうこうしても、「自分の環境でこんな感じです」と提示もしていないので、文字だけでは伝わらないのかも知れません。それはあるはずです。
そんな事から、実際にデータを取ったサイトがあるので紹介します。

KDE Plasma 6.7 X11 vs. Wayland Session Gaming Performance For NVIDIA On CachyOS|phoronix(英語。3ページあります)
英語ですが、この記事の概要を説明していきます。
主に様々なLinuxゲーム(NativeおよびProton/Wine経由)やグラフィックスベンチマークを用いた、X11セッションとWaylandセッションの直接的なパフォーマンス比較が行われています。
多くのゲームでほぼ互角のパフォーマンス
多くのゲーム(特にグラフィックス負荷の高いモダンなタイトルや、すでに最適化が進んでいるタイトル)において、X11とWaylandの間で平均フレームレート(FPS)に劇的な差は見られません。両者ともにハードウェア(GPU)の性能をしっかりと引き出せており、誤差の範囲内か数FPS程度の僅差に収まる結果が多数を占めています。
- 劇的な差がないならばX11でよいのではないか?と思う方もいるでしょう。前述の流れから言えば、半世紀近い歴史があるX11に対してぽっと出のWaylandと同等だと理解してください。
- 「対等なパフォーマンスが出ている」という事実は、Waylandが追いついたのではなくX11が40年かけてようやく到達した進化の最先端(ゴール)に、Waylandは最初から立っているという事です。
「劇的な差がないならば……」
YServer
YServerというモダンなX11の後継プロジェクトもあります。新しいデバイスや技術が出現する度に改修を加えられてきたX11のスパゲッティ状態になってしまったコードを新たにRustで書き直すということを行ったものです。
バイブコーディング(Vibe Coding)とは
AIに自然言語で指示を出すだけでソフトウェアやアプリの開発を進める手法です。プログラミング言語を手入力するのではなく、人間がAIと対話しながら「アイデア出し・コード生成・テスト・修正」のサイクルを高速で回すのが特徴です。
更に問題はあります。いくらX11環境が動作すると言えど、もはや多くのアプリなどはWayland用に作り変えられたと言っても過言ではありません。そこからまたモダンX11環境に戻るとするなら、Waylandを明確に超える優位性がなければそれらは行われないでしょう。
Wayland(XWayland)が優位に立つケース
いくつかのゲームタイトルや特定のベンチマーク(例えば一部の低設定ベンチマークや、フレームレートが数百FPSに達するような非常に軽いタイトル)では、Wayland(XWayland)のほうがわずかに、あるいは明確に高いフレームレートを記録する結果が出ています。
オーバーヘッドがないとは
「オーバーヘッドがない」状態とは、システム間のデータのやり取りや処理の切り替えにおいて、余計なデータ付与や待ち時間が極限までカットされ、CPUやメモリの能力が100%ゲーム本体の描画や演算に直結している理想的な状態を意味します。
軽いタイトルならパフォーマンスが高くて当然だと思われる方もいるでしょう。しかし重いAAAタイトルでも差はないということです。
- ボトルネックがプロトコルではなくGPUになるからに他ならない
- 重いタイトルはGPUの性能がボトルネックになります。Waylandは描画のオーバーヘッドは極限までゼロに近いためGPUの足を引っ張ることはありません。
- X11でGPUの限界まで性能が引き出せているのであれば、Waylandでも全く同じように性能を引きだせている
- 最低フレームレートではWaylandの方が安定している
- ゲームなどで言えば平均FPSが同じ(差がない)であっても、重いシーンでの体感的な滑らかさ最低FPSの維持率はWaylandのほうが優秀、あるいは安定している」という傾向があります。
これらから重いゲームでも全く互角、むしろ足回りが強くなった分だけWaylandのほうが安定していると言えます。
実データのグラフから見るWayland
「現代のKDE Plasma(特にCachyOSのようなパフォーマンス重視のディストリビューション)において、WaylandはX11に対してパフォーマンス面で劣ることはなく、むしろタイトルによってはX11を上回ります。
前述しましたが、X11の歴史の到達点がWaylandのスタートです。どちらの方がより遠くへ行けるかはもうわかりますよね?
だからWaylandへ
今X11を使う理由は、古いX11のアプリを使用する時のみで、それらアプリの後継バージョンではたいていWaylandに対応しているか、Waylandで同機能を持っている別アプリが出ていると思います。
先日、Linux Mint(Cinnamon環境)がWaylandの対応で実験的(experimental)を次期バージョンで外すというニュースがありました。しかし、完全に移行するわけではなくログイン画面でX11もWaylandもいずれもが選べるような感じになります。
元々MintはX11に深く依存していて、他のディストリビューションがWaylandに対応していく中、かなり遅れての対応という感じだったと見えますが、強固にバックエンドを作り込み、従来(X11)と使用感が変わらないまでに達したので満を持してWayland対応となるわけです。
Linux Mintは古い環境でも動作するということが利点の一つですが、それらを含め保守性と堅牢性を重視するのが彼らMintチームの哲学ですのでWaylandにそそくさと、流行りに任せるようには移行できなかったとも言えるでしょう。
CachyOSなどでは古すぎるハードは敢えて切る事で様々な障害をなくそうとしています。ユーザーはより良い性能のPCを使用したかったり、昔にはなかった高解像度(HiDPI)のモニターや、GPUを使用してゲームであったり動画編集であったりをするわけです。
例えば、「大衆食堂の方が好きだと、QRコードで注文するようなレストランなど全く好みではない」と言いながら「支払いはPayPayで」という何とも言えない状況がMintにはあるような気がします。
もし、古いPCに高解像度のモニターを付けた、最新のGPUを搭載した。これでゲームができるんだろ?としたらそれは思い違いになってしまいます。そもそも古いPCに最新のGPUが載って最大のパフォーマンスが出るでしょうか?
- 昔のPCI Expressの世代(Gen 2やGen 3)に最新のGPU(Gen 4やGen 5前提)をさしても、データを送る道が狭すぎて、GPUは本来の性能の半分も出せないWindowsで言う「互換モード」のような状態になります。
- 最新のGPUが超高速で処理したくても、古いCPUの処理が遅すぎてGPUがサボってしまう「CPUボトルネック」が発生します。
- マザーボード側や古いグラフィック規格の制限で、最新の4Kモニターを繋いでも「解像度は4Kが選べるが、リフレッシュレートが30Hzしか出なくて画面がガクガクする」、あるいはそもそも映らない、といったトラブルが普通に起きます。
ここにはもうX11であるとかWaylandであるかというソフト的な話ではなく、太っている人が子供用の服を着るような、たとえ着れるとしてもそれはどういう了見だと言いたくなる事が起こるわけです。
Mintが古いハードやX11を現在までサポートしていたのはそれら古い機能を使用するユーザーがいたからで、今店頭に並んでいるモニターやGPUを使用している人に対してではないのです。Waylandのサポートが始まるとしても同様のことが言えます。
Linuxでしたいゲームがあるのであれば、
- それを動かすにはどれぐらいのスペックが必要か
大きな画面で表示したいなら、
- それらを可能にするにはどういうシステムでなければならないか
などを、目的から遡って考えていき、最終的にどういうPCであるべきかと言う答えにたどり着く考え方がいるということです。
その過程で、X11かWaylandかという問いにぶつかるはずです。しかしもう答えは書きました。X11の到達点がWaylandのスタートである、そしてより遠くに行けるのはどちらだろうか、レールという制限をなくしたのがWaylandである。
だからWaylandへなんです。
まとめ
手段の目的化から入る人がとても多い印象を持っています。
Atomicな環境でどこまでできるかとか、Bazziteのようなゲームに特化したOSでは思ったようにはできないかも知れません。
最新を追うか、同じ状態を長く保つかが目安です。同じアプリでも最新の方が良いに決まってますが、最新のものには未知のバグがあるかも知れないという不安もあります。長く同じ状態を保持していると最新のものが世の中にあるのに古いまま使うことになります。
手段と目的
Waylandを今さら疑う必要がないのは、現代のソフトウェア等がそれを前提に動いているからです。
Linuxでモダンな性能を引き出したいならCachyOSのような最先端を選べばいいですし、変わらない安心が欲しいならArch系以外のUbuntuやMintを選べば良いとなります。
上級者向けというのは、Gentoo LinuxやNixOSのような一般的なディストリビューションとは違った仕組みを持っているもののことを言うと私は思っています。
どこかでも書きましたが、最初から全部用意してくれているWindowsやLinuxのディストリビューションと、ある程度、事前知識が必要で自分である程度用意しなければならないというのも壁とか難しさと思われるかも知れませんが、基本的には慣れです。
何をするにしろ目的さえ見据えれば、迷う必要も、今さら古いX11にしがみつく理由も、どこにもないはずなのです。その目的のために手段を選んでいるのですから。
ゲームの比較動画で再確認
ゲームの話ばかりになりますが、わかりやすいので少し続けます。
DirectX 12を駆使するモダンなAAAタイトル(『黒神話:悟空』や『ドラゴンズドグマ 2』『バルダーズ・ゲート3』など)において、CachyOS(動画ではLinuxと表記)は、Windows11と完全に互角、あるいはタイトルやシーンによってはWindowsを数FPS上回るパフォーマンスを叩き出しています。
これは、Windowsネイティブで作られたゲームをLinux上で動かすための互換レイヤー(Proton/DXVK/VKD3D)のオーバーヘッド(ロス)が、現代においては「ほぼゼロ」であることを意味しています。それどころか、CachyOSによるカーネルレベルでの最適化や、無駄を削ぎ落としたWayland環境の効率の良さが、Windowsのシステム全体の重さを上回った結果と言えます。
Windows11の重さ
Windows11はそれを動かすために他で動いているものがたくさんあって、更にデータの送信や次に起動するアプリを高速に開くための前準備というようなことをしています。その余力でゲームをしてるわけです。ゲームをしている間はそれらが止められるのであれば良いですがそれらはおそらく操作できません。 そのため、それらが動作してもそれを上回る性能を引き出す(高速で大容量のメモリやSSDの速さ、GPUの性能等の)高級パーツ、もしくはIntelで言えば12世代以降のPコア、Eコアで処理を振り分けるような機能、どうせなら高級パーツと性能、最新のCPUいずれもが必要になってしまうわけです。それでも足りないと言われたりもします
グラフィックスやCPU負荷が非常に高い最新のゲームにおいて、平均フレームレートだけでなく、最低フレームレートの安定感や画面の滑らかさ(スタッターの少なさ、カクつきの無さ)においてLinux側が非常に健闘していることが分かります。
一方で、タイトルによってはWindowsの方がわずかに安定している、あるいはフレームレートが出ているケース(『Quake Champions』など)もあります。これはLinux側の性能が低いからではなく、ゲームのエンジンと互換レイヤーの相性、あるいは古いグラフィックスAPIの翻訳に起因するものです。
「初心者だからMint」と妥協するのではなく、「最新のゲームを高パフォーマンスで動かしたい」という明確な目的があるなら、さっさとCachyOSのような最先端(Waylandのルール)に身体を馴染ませた方が、Windowsに匹敵する最高の体験を最短ルートで得られると言うことです。
こういう事から、ゲームをするとなって、「それじゃMint」とはならないかも知れませんが、MintがWaylandに対応するのはアプリがそのように変わっているので致し方なくという点もあります。
「サブ機があるからMintを使ってLinuxで使う」ではなく、目的が「Linuxでゲーム」であるなら、もっと新しいPCをサブ機にするべきです。比較的新し目なPCをサブ機にするならそれはMintである必要はありません。もっとゲームが快適に動かせるディストリビューションを選ぶべきです。
しかし、「変わらないならどっちでもいい」は違って、前述した喩えで言えば蒸気機関のX11では無く、Waylandと言う内燃機関(エンジン)で自由にどこへでも旅をする。空を飛ぶことも現在は可能になりました。ということであればどっちを選択しますか?という事なのです。
そこから車で移動して行く所が目的地です。その日泊まるホテルかも知れませんし観光地かも知れません。ゲームであるかサイト巡回かも、動画制作かも、動画視聴かもしれません。その目的に合わして、そこから遡って色んな事を、手段を決定しましょう。